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[特集]

深夜の国道沿い、賑わう路上マッサージ店

2020/12/27 05:16 JST更新

(C) thanhnien
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 ここ数年、ホーチミン市のアンスオン交差点に近い国道1A号線沿いでは、道の両側に移動式の路上マッサージ店が並んでいる様子を目にする。

 中でもドライバーや労働者に人気なのが、伝統的な民間療法「カッピング(吸い玉)療法(ザックホイ=Giac hoi)」だ。国道1A号線のクアンチュン立体交差橋からアンスオン交差点までの区間の路上店であれば、1回につきわずか5万VND(約230円)で約20分間のサービスを受けることができる。

 クアンチュン立体交差橋からアンスオン交差点までの区間は1kmほどの長さだが、10軒を超えるザックホイ店が並んでいる。道具はシンプルで、いくつかのガラス製カップに、温かいオイルの入った瓶、タオル1枚、ライター1本、ザックホイ後のマッサージ用オイル、カップの洗浄用アルコールなど。他には客が寝そべるゴザと枕があるだけだ。

 通常、平日は無休で営業し、午後6~7時ごろから準備を始め、8~9時から深夜にかけて混雑する。マッサージ師たちが仕事を終えるのは深夜2時ごろだ。

 北部紅河デルタ地方ビンフック省出身のフンさんは、路上マッサージ店を開いて10年余りが経つ。苦労が多いにもかかわらず、フンさんは2007年からこの仕事を続けている。

 「他に仕事の選択肢がなかったわけではなく、あえてこの仕事を選んだんです。過去には建設労働者や果物売りなど色々な仕事を経験してきました。昔、故郷に路上マッサージ店があったので、ホーチミン市でもやってみようと思い、転職したんです」とフンさんは語る。

 フンさんは、自転車であちこち走って客を探したり、一般的なマッサージ店で雇われて働いたりする代わりに、移動式の路上マッサージ店を最初に始めた人の1人だ。以降、フンさんは同郷の人たちにも路上マッサージ店の仕事を紹介し、仲間を増やしてきた。

 週末には10人以上の客に施術するが、平日は4~5人ほど。フンさんの仕事だけでは十分な収入にならないが、妻の資源回収(ベーチャイ=ve chai)の収入も合わせれば生活費をまかなうことができ、さらに2人の子供の養育費も足りている。上の子はバンヒエン大学の学生で、下の子は高校1年生だ。住まいは仕事場にも近い12区の借家で、1か月の家賃は約150万VND(約6800円)だという。

 しかし、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、何か月も仕事ができなかった。妻も同じで、家計を支えるために借金をせざるを得なかった。今は年末も近づき、わずかながら客足も増えており、借金返済に充てる収入も増えて喜んでいる。一方、今年は故郷に帰るお金がなく、ホーチミン市にいなければならないため、悲しさも感じている。

 フンさんは仕事についてこう話す。「夜に働いて深夜に帰宅するのでちょっと大変ですが、営業時間は自由に決められるので気楽です」。

 この仕事を始めてから10年余りの間に、フンさんは歩道占拠により何度か取り締まりを受け、仕事道具を没収されたことがある。1セットあたり数十万VND(10万VND=450円)はかかるため、没収されれば損失を被ることになる。しかし、賃料を支払わずに路上で店を出している限り、逮捕されたとしても受け入れるしかないとフンさんは語る。

 しかしここ数年は、この路上マッサージ店が他人に影響を与えるものではなく、やましいサービスでもないことが理解され、マッサージ師たちが収入を得られるように当局も素通りするようになった。

 フンさんは、労働者やドライバーたちの収入に見合った安い料金でサービスを提供し、彼らが次の仕事に向けて心と身体の調子を取り戻す手伝いができることを嬉しく感じている。

 あるトラック運転手は、フンさんの店の近くの路肩にトラックを停めると、エンジンも切らずに車を降りて、フンさんの店にまっすぐ近づき、服を脱いで慣れた様子でゴザの上にうつ伏せに横たわった。

 フンさんは客の背中にザックホイを施し、手足もマッサージした。その後、客を仰向けにし、胸にもザックホイをし、再び手足をマッサージした。最後に額と顔もマッサージして、約20分のサービスが終了した。客はフンさんに料金を支払い、トラックに戻っていった。

 客はトラック運転手のほか、三輪車やバイクタクシーの運転手、工業団地の工員、地元の会社員など様々だが、ほとんどが低所得者で、手頃な料金でニーズを満たせるためこうした路上マッサージ店を訪れている。

 客足が安定している他のビジネスやサービスとは異なり、路上マッサージ店の客はたまたま通りがかった通行人が多く、常連客はごくわずかだ。そのため、新型コロナの影響がなくとも客足は常に不安定で、客がまったくいないときもあり、収入がなければ借金をしなければならなくなる。

 一方、次々と客がやってくるときも少なくなく、客が多ければマッサージ師たちにもエンジンがかかる。おそらく、このことこそが、大変な仕事にもかかわらず長い間この仕事を続ける原動力になっているのだろう。 

[Thanh Nien 12:21 25/12/2020, A]
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