[特集]
Z30D刑務所に暮らす200人の外国人受刑者たち
2020/07/12 05:19 JST更新
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南中部沿岸地方ビントゥアン省ハムタン郡(huyen Ham Tan)にあるトゥードゥック(Thu Duc)刑務所は、またの名をZ30D刑務所といい、ベトナムで最大規模の刑務所として知られる。
ここは、約200人の外国人受刑者たちが社会復帰を果たして母国へ帰る日に備えて、自身の過ちを正し、自らを戒めることを支援する教育の場でもある。
公安省傘下矯正施設・義務教育施設・刑務所管理警察局のトゥードゥック刑務所副看守長ファム・ティ・ミン・ハイ上佐はこう話す。
「ここには『囚人』はおらず、『受刑者』、つまり彼らが犯した過ちにより刑を受けている者がいるだけです。そのため、受刑者の管理・教育・更生においては法律の規定を遵守し、人道的かつ人間らしく、また人権を確保・尊重して対応しなければなりません。このように任務を果たすことで、刑務所は道を外れてしまった人々が人生を学ぶための学校となります」。
ここに収監されている外国人受刑者の国籍は21か国に及ぶ。しかし、8人については国籍不明だ。外国人受刑者に対する食事や衣服、宿泊施設、日常生活、医療などの制度は、いずれも法律の規定に従っている。刑期の短縮や恩赦などの制度は、ベトナム人受刑者と同じだ。
外国人受刑者たちは第1棟の2つのエリアに集団で収監されている。周りには草木や花があふれ、たくさんの窓から明かりが差し込み、テレビもある。寝床も十分な面積があり、必要な身の回り品が揃っている。
ベトナム系米国人のジョン・グエン受刑者(男)は、刑務所で暮らして19年になる。ここは環境も良く、スタッフも熱心に更生を支援してくれると話す。刑務所にいる間も受刑者は規定の範囲内で適度に飲食することができるが、祝祭日にはより多く食べることができる。
また、貯金があれば物を購入したりすることも認められる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下で家族が送金できない場合などは、刑務所が代わりに支援する。面会に訪れる家族も、こうした環境を目にして安心し、受刑者に出所に向けて更生に集中するよう声をかける。
ナイジェリア人のニコラス・スターズ受刑者(男)は、刑務所に入って5年になる。4か月に1回は領事館の担当者が、1~2年に1回は家族が面会に訪れる。「刑期はあと10年ありますが、早く出所できるように頑張ります」とニコラス受刑者はベトナム語で語った。
Z30D刑務所にいる外国人受刑者は、社会復帰をして家族や社会の役に立つことができるよう、職業指導や職業訓練、文化教育を受けるほか、文化スポーツ活動に参加したり、ベトナム語を学んだりもする。
生産作業は、受刑者の年齢や体質、状態などに応じてあてがわれるが、これによって労働の価値に対する理解を深め、自身と他人の労働の成果に敬意を表するようになることが期待できる。労働は受刑者の心を鍛えるだけでなく、心を整え、刑期を終えた後の人生への信念を育てることにもつながる。
中国人のリー・チュン・イン受刑者(女)は、収監された当初はパニックだったと語る。しかし、スタッフの説明と助言のおかげで精神状態は徐々に安定していき、安心して更生に集中できるようになった。刑務所では女性用の身の回り品も十分に与えられる。
「私は刑務所内の卓球大会で何度も優勝しています。ベトナム語はあまり話せませんが、看守の方々には本当に感謝していますし、家族のような愛情を感じています」とリー受刑者は感慨深げに話す。
外国人受刑者にとってベトナム語を学ぶことは生活の共通言語を学ぶというだけでなく、刑務所の規定やルール、ベトナム政府と共産党の法律や政策をよりよく理解することでもある。また、ベトナムの民族と伝統文化を知り、親しむ機会ともなる。
台湾人のペン・カン・ユー受刑者(男)によると、Z30D刑務所の外国人受刑者はカンボジアやナイジェリア、タイ、米国など様々な国籍の人がいるため、ベトナム語を学ぶことにより、互いに言葉を交わし、理解し合うことができているという。
タイ人のプレアヤムーチ受刑者(女)は、学生時代から英語を習得していたことがベトナム語の学習にも役立っており、ベトナム語の授業では先生のアシスタントを務めるほどだ。
「ベトナム語を学習することで、刑務所のスタッフの話を理解することができ、服役にあたり信頼性と精神状態の安定性にも寄与しています。社会は大きく変わったので先のことはわかりませんが、いつかタイに帰ったら、ベトナムに関連する仕事に就き、引き続きベトナム語を使っていきたいです」と、プレアヤムーチ受刑者は今後について語った。
マレーシア人のモハド・ハーフェズ・ゴメス・ビン・アブドゥッラー受刑者はZ30D刑務所で暮らして19年の古参で、ベトナム語をすらすらと操る。刑務所に入ったばかりのころは強情で態度も悪かったが、刑務所のスタッフの気遣いや支援のおかげで、家族の元へ帰って人生をやり直すために自分を変える決心をした。
「刑務所のスタッフの支援と愛情が、受刑者にとって善良な人間に更生する動機付けになります。私自身も7回刑期が短縮され、残すところ10か月で自由の身です。10か月はあっという間でしょう。家族も私の帰りを待っていますから」と流ちょうなベトナム語で話した。
この刑務所で服役した多くの外国人受刑者たちは、服役中の支援に対する感謝の意をノートに記して出所していった。刑務所は犯罪者を捕らえ、罰する場所というよりも、受刑者の教育を行い、心を入れ替えさせ、自信を持たせるとともに、過ちを正して人生をやり直すための場所なのだ。
[Tuoi Tre 19:41 08/07/2020, A]
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