[特集]
2大陸を大型バイクで制覇、66歳の4万5000kmの旅
2020/03/22 05:35 JST更新
(C) vnexpress |
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チャン・レ・フンさん(男性・66歳)は、6か月かけてアジア大陸とヨーロッパ大陸をバイクで横断した。その間には、チェーンが2回切れ、タイヤを3本交換し、数えきれないほど転倒した。
機械技術者だった若かりし頃から、フンさんはあちこち移動するのが好きだった。2018年、バイクで世界を旅したベトナム人の若者ダン・コアさんをきっかけに、フンさん自身も旅に出ることを思いついた。
フンさんは新しく大型バイクを購入し、半年かけて身体を調整した。2018年の冬から2019年の夏にかけて、来る日も来る日も重量200kgのバイクを慣らし、雨でも真夜中でもあらゆる地形を走った。そして、地図の読み方や目的地の国々の宗教や政治を学んだ。
「身体を鍛え、持久力を高めるために、気温10度以下の寒さで紅(ホン)河に泳ぎに行き、サッカーをし、武術も練習しました」と、身長1.6m、体重52kgのフンさんは語る。
そして2019年7月2日、フンさんはついに同行者のガイドとともに出発した。
その日、ラオスの国境を越えて50kmほど走ったところで最初の事故が起きた。「悪路に入り、不注意であまりにも大きくカーブしてしまい、ハンドルを制御できなくなりました。崖から落ちないよう道端の距離標に突っ込みました。バイクのフロント部分は破損し、タイヤはリムから外れ、私は吹っ飛びました」とフンさん。「ここで転倒したことでその先さらに注意深くなれる、と幸運に感じました」。
通常は毎日20L(400km以上分)のガソリンタンクが空っぽになるくらい走っていたが、日によってはビザの期限に間に合うよう、気温40度以上の暑さで中国や新疆の砂嵐の中を1000kmも走らなければならないこともあった。
「でも、氷点下16度の寒さの中を600km以上走らなければならなかった日に比べれば怖くありません。その時は服を10枚重ね着しても手足の感覚がなく、30km走るごとに止まってバイクのマフラーで手を温めていましたから」。
砂嵐を抜けると、次はキルギスにある標高4000km近い峠を越えるという困難が待ち受けていた。険しい岩だらけの道に、片側は高い山、もう片側は深い断崖。「無限に続く音楽のように坂を上り、下りました。この山を征服することはバイカーたちの夢です。でも、あまりにも過酷で私は途中でリタイアしなければなりませんでした」とフンさんは語る。
ある夜は、道端に張ったテントの中に座り、ありったけの服を着ても歯がガチガチと鳴った。寒さと空腹と息苦しさの中でも、フンさんは「ここで一夜を過ごすことにも価値がある」と自分を慰めた。
フンさんに同行したガイドは、「フンさんは(私にとって)お客さんですが、道に迷ったり、食事や睡眠をとる場所が見つからない時でも文句ひとつ言いませんでした。フンさんが私たちの世話をし、励ましてくれることもありました。特にフンさんのバイク修理の腕前にはたくさん助けられましたし、外国人の修理工でさえ感心していました」と語る。
旅の途中で起きた数々の事故の痕跡は、折れたミラーや長い傷のついた車体、ぼろぼろのリアボックスに今でも残っている。「カザフスタンの高速道路で転倒した時、ミラーが折れて数十m吹っ飛びました。私の身体は路上を滑り、服は破れ、(服の)羽が雪のように舞いました」とフンさんは振り返る。
4万5000kmの旅は、フンさんに「お金で買えない」感覚を与えてくれた。フンさんにとって最もロマンチックな思い出は、シルクロードの終わりにあるキルギスだ。危険な道もあったが、そこには山々がそびえ、荒野が広がり、山腹で家畜が放牧され、遊牧民が穏やかな暮らしを送っていた。
スイスでは、平静でロマンチックな自然を目にして、なぜそこでジュネーブ協定が締結されたのか、またなぜ人生を捨てたかった亡命者たちがそこで生まれ変わりたいと感じたのかを理解した。
そして、ジョージアに着いた時、フンさんの感情は崩壊した。ジョージアは、フンさんが1973年から1976年まで学んだ地だ。かつての思い出の針葉樹は、もはら古い木になってしまっていた。
「学校の門の前にバイクを停めて、上着を脱ぎ、芝生に向かって駆け出して寝転びました。森に入り、かつてよく食べていた桑の実の枝を抱きしめました」。フンさんは声を失い、目を輝かせた。「若い頃、友人と外へ出て夕日や雪解けを眺め、道行く女子学生を眺めていました。生き生きとしたイメージと寮の独特な匂いが一気に押し寄せ、息が苦しくなりました」。
ジョージアを離れ、ヨーロッパを進み、ベトナムへ帰国する前にロシアと中国に戻った。帰り道の1万km余りは氷点下で、本当に「挑戦」だった。
12月19日夜、バイクは4万5000kmの旅を終えて自宅の前に停まった。この時、フンさんは初めて自分が成功したのだと確信した。自宅に入ると、半年離れ離れだったホンダ67に近付き、触れた。「帰ってきたよ。お前の弟子(共に旅した新しいバイク)は任務を完了した」。
帰宅時の手土産は、泥だらけのバイク、切れたチェーン、そしていくつかの巻貝と思い出の古い木の下で拾った松の実だ。今、それはガラスケースに入れられ、毎日フンさんが通るたびに目につくところに置かれている。
[VnExpress 12:22 10/01/2020, A]
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