[特集]
女優から転身、バンブー航空唯一の女性パイロット【前編】
2019/04/21 05:46 JST更新
(C) vnexpress, 2019年4月16日のフライト後のトゥイさん |
(C) vnexpress, 客室乗務員時代のトゥイさん(前列中央) |
女優だったジエウ・トゥイ(Dieu Thuy)さんは、26歳でパイロットになるための勉強を始めた。彼女にとって、これはリスクの高い賭けのようなものだった。チャンスは1度きり。絶対にこのチャンスをつかむと決めた。
女優ジエウ・トゥイことグエン・チャン・ジエウ・トゥイ(Nguyen Tran Dieu Thuy)さん(29歳)は、2019年1月に開業したばかりのベトナムの航空会社「バンブー航空(Bamboo Airways)」で唯一の女性パイロットだ。
彼女は、ベトナムで民間航空機を操縦するという目標のため、フランスでのチャンスを捨てて帰国した。これは、結婚したばかりにもかかわらず、フランスでビジネスを手掛ける夫と一緒にいる時間がほとんどないということも意味する。
5年前、トゥイさんはテレビドラマに数多く出演する女優として知られていた。代表作は「
Doc Suong Mu」や「
Huyen Thoai 1C」、「Nhung Manh Doi Giong Bao」、「Dong Tien Den」などだ。2013年、彼女は両親に従い、女優業を辞めて東南部地方ビンズオン省にある家具会社に就職した。
就職して6か月、朝から晩まで働き詰めで、休む暇もほとんどなかった。そんな時、トゥイさんは突然、「働きながら旅行ができる仕事」を思いついた。そして冗談半分でアラブ首長国連邦(UAE)の航空会社に履歴書を送ってみたところ、なんと1週間後に面接に呼ばれ、すぐに採用されたのだった。
こうして24歳のトゥイさんはエティハド航空(Etihad Airways)の客室乗務員となり、世界中を旅したいという夢も叶い、さらに長年密かに勉強してきた英語力も鍛えられた。しかし、確かに仕事は理想的だったが、彼女がここで止まることはなかった。
航空会社の新入社員として操縦室に入り、パイロットの離着陸時の操縦を何度か見学したトゥイさんは、質問したり自身で調べたりしながら航空機の操縦の原理を学んだ。彼女の言葉に対して機長が「その通り」とうなずくと、副操縦士は客室乗務員である彼女がコックピットの設備について理解していることに驚いた。
そこで副操縦士が飛行計画表をトゥイさんに渡すと、トゥイさんは「この数字は飛行時間と消費燃料ですよね?」と質問した。すると、この副操縦士は「この子は素質がある。パイロットになりたいと思ったことはないのか?」と微笑みながら言ったのだった。
あまりにも急な問いかけだったためトゥイさんは一瞬ためらったが、「私は女性なので考えたこともありませんでしたし、パイロットになる勉強をするためのお金もありません」と答えた。すると機長も「心配することは何もない。私の娘だってパイロットを目指して勉強中だ。応援するよ」と励ました。
この思いがけない言葉に、彼女の心の中で欲望が燃え上がった。以来、彼女はパイロットになるという計画を温め始めた。この目標のためにはまず資金が必要だった。彼女は給料のほとんど、3000~3500USD(約33万~39万円)を毎月貯めていった。
2016年6月、女優時代の貯金と客室乗務員の2年半に節約して貯めた25億VND(約1200万円)を握りしめて、トゥイさんは夢を叶えるためベトナムに帰国した。これは、もう若くない彼女にとってリスクの高い賭けでもあった。
多くの友人も、26歳でパイロットになるための勉強をするなんて、と心配を口にした。彼女自身も何度も思い悩んだ。「26歳の私に、勉強するのに十分な知能と健康、根気がまだ残っているだろうか、と何度も考えました」とトゥイさんは振り返る。
チャンスは1度きり。でも、これを逃したらチャンスはもうやってこない。その夏、トゥイさんはパイロット養成校であるベトフライトトレーニング(Viet Flight Training)の6か月間の航空輸送理論コースに参加するための試験に合格した。ここでは、膨大な量の新しい、複雑な知識を学ばなければならず、彼女にとって最も過酷な時期だった。
後編へ続く
[VnExpress 09:53 17/04/2019, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.
このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。