[特集]
注射器を巧みに操る魔女、寒天に浮かび上がる可憐な3Dアート
2018/10/14 05:41 JST更新
(C) Thanh Nien |
(C) Thanh Nien |
チャン・フオン・ガーさんは、寒天を使った3Dアートを創り出す「魔女」と呼ばれている。ガーさんが多く手掛けている作品はバラ、藤や菊、ザボンの花などの花々。しかし、寒天に絵を描くことはそう容易なことではない。何度も試行錯誤を重ねて、目にも鮮やかな花々を寒天の中に咲かせられるようになった。細部であるほど繊細さや精密さが必要で、仕上がりの美しさに大きく影響してくる。
この可憐な花々を寒天の中に描く魔女の三種の神器は、注射器とフルーツカービング用の彫刻ツール2本。紙に鉛筆で絵を描く時のように、注射器を使うと寒天の中に滑らかな線を描くことができる。注射器を寒天に刺し、着色した溶液を注入しながら線を繰り返し描くことで、寒天の中にはまるで本物のように生き生きとした花が浮き上がる。
溶液の着色には黄色はウコン、赤色はカボチャ、紫は紫芋、白は牛乳やココナッツミルク、緑色は抹茶などの天然色素を使用している。このため、ガーさんの寒天アートは目に美しいだけでなく、食べても美味しくいただける。
寒天の3Dアートには寒天の調理、着色、デコレーション、仕上げの寒天コーティングの4つの工程がある。それぞれの工程を少しでも間違えれば、作品を本物の花々のように美しく仕上げることはできない。
まずはベースとなる寒天が固まるのを待つ。色付けに使う寒天は注射器でベースに注入するため、固まらないように一定の温度に保たなければならない。作業中に溶液が固まってしまった場合には溶液を熱湯につけて溶かしてから作業を再開する。
花々の色付けに成功するまでには幾度となく失敗したという。当初は果汁のみで色付けをしていたが、淡い色のため絵柄がぼんやりとしてしまっていた。試行錯誤の末にあみ出したのが、果汁にコンデンスミルクを混ぜて使う方法だ。調合した溶液を使うと色鮮やかで美しい花を描けるようになった。
ガーさんはかつて注射器と縁の深い職業に就いていた。国立獣医研究所の応用研究技術移転センターの研究員だったのだ。ある時、家族の1人が果物を好まず市販の寒天ばかりを食べていたことから、果物を使った寒天を作ろうと思いついた。それがきっかけとなり、寒天の3Dアートに目覚めたガーさんは研究員の仕事を止め、3Dアートの技術を磨いている。今では花々のほかに風景や人、鳥なども描けるまでになった。
制作に要する時間は図案の複雑さやサイズによって異なるが、簡単なもので10分程度、難しいもので半日ほどで仕上がる。出来上がった作品は写真に撮りソーシャルネットワークに投稿し、ファンからはその巧みな技術から「寒天3Dアートの魔女」と呼ばれている。ガーさん誕生日や結婚式、テト(旧正月)などのイベント向けの寒天3Dアートも受注しており、ケーキに代わるお祝いの一品として人気を集めている。
現在では国内のみならず、オーストラリア、ドイツ、フランス、オーストリア、ロシアなど世界各国から、ガーさんに寒天3Dアートを学びに来る人もおり、ガーさんの作品制作の励みになっている。
「家族のサポートもあり自分の好きなことができること、同じ趣味を持つ人々と一緒に創作できることが私にとってとても大切なんです」。これからも魔女の手から新たな作品が次々と生み出されることだろう。
[Thanh Nien 07:12 27/08/2018, T]
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