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[特集]

完全予約制の「コーヒー空間」、喧騒を忘れて最高のコーヒーを堪能

2018/02/25 05:49 JST更新

(C) VnExpress
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 ホーチミン市1区グエンフエ通りにある「アラビカコーヒー空間」でいただく、南中部高原地方ラムドン省ダラット市産のアラビカコーヒー豆で淹れたエスプレッソが絶品だ。

 同店は完全予約制で、最低でも1日前には予約を入れる必要がある。メニューはブンボー(ピリ辛牛肉入りスープ麺)・アラビカコーヒー・マドレーヌのセット1種類のみで、全てオーナーのクアン・ビンさんが直々に調理、給仕する。コーヒーに至っては生産地へ赴き、自ら豆を収穫から焙煎までする本格派。

 「お客様に最高のコーヒーを味わって欲しいので、常連さんを優先させていただいてはいますが、新規のお客様のご予約もなるべくお受けしています。また、ダラット産の高級アラビカコーヒーを広く知っていただきたいので、外国人のお客様も大歓迎です」とビンさん。同店はカフェではなく、あくまでコーヒーを堪能する空間だとするビンさんのこだわりが伺える。

 ビンさんのことを変わり者と言う人もいるが、自分でコーヒー豆を摘んで焙煎するうえに料理や菓子作りまでこなし、ホーチミンで一番とも言える雑踏にある小さな空間で静かにコーヒーを淹れるビンさんを、まるで小説から飛び出してきた人のようだと例える人も多い。

 「うちで出しているコーヒーは他のどこを探しても見つからないですよ。ホーチミン市から古びたカブに乗ってダラットのカウダット村まで行って、海抜1700mにある完熟して一番美味しいコーヒー豆を一粒ずつ摘んでいますからね」と話すビンさんご自慢のコーヒーは、実に手間ひまが掛かっている。

 今から3年ほど前、コーヒーに魅せられたビンさんは金融やメディアの職を辞して良質なアラビカコーヒー豆が採れる木の探究を始めた。農家と協力し木を保護して、毎年12月に山へ登っては豆の収穫をする。ビンさんは豆の収穫から果肉の処理、豆の天日干しや選別、焙煎までを全て1人で行う。

 コーヒー豆に携わるようになった当初は苦労も多かった。米国に留学していた頃にスターバックスコーヒーでアルバイト経験はあったものの、コーヒーについては全くの素人だったビンさんは、ユーチューブ(YouTube)の動画を見てコーヒー豆の生産からコーヒーを淹れるところまでを学んだ。

 「豆の収穫を始めた頃、熟れたコーヒー豆が入った袋を泊まっていたホテルの玄関前に置いていたら果汁が漏れ出して、ホテルの職員に怒られたりして…」と、そんな出来事も今となっては楽しい思い出だ。コーヒー通の知人らに試飲をしてもらいながら、初めて褒めてもらった時にビンさんのコーヒーが完成したと感じたそうだ。

 全ての工程を1人で行っているため、ビンさんのコーヒー豆は1シーズンに300kgほどしかない。一部をホーチミン市内の5つ星ホテルに1kgあたり1000万VND(約4万8309円)で卸しているほか、複数の取引先へ納品している。残りのコーヒー豆を多くの人に楽しんでもらいたいという思いから、この「空間」でコーヒーを提供するようになって1年になる。

 コーヒーや料理の準備には手間がかかるが、客の1人ひとりと友人のように直接会話ができるよう人は雇わない。

 ビンさんによれば、1975年以前のサイゴンにも同店のような営業形態の店があったが、利益が伸びずいずれも長くは続かなかったそう。「コーヒーで利益を出したいならチェーン展開しなければなりませんが、私には関係のない話です」とビンさんは、今のところ生産量を増やす予定はないという。

 しかし、ホーチミンの喧騒を忘れてゆったりとアラビカコーヒーを堪能できるビンさんの「空間」は客らから高い支持を得ている。「ダラットのアラビカコーヒー豆に情熱をかけてきた私にとって、お客様のお褒めの言葉は何よりのご褒美です」とビンさんは語る。 

[Vien Thong, VnExpress, 17/1/2018 07:53 GMT+7, T]
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