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[特集]

配車サービス「Grab」で活躍する盲目のベトナム人プログラマー

2017/12/17 05:17 JST更新

(C) zing, ChannelNewsAsia, ザンさん(右)
(C) zing, ChannelNewsAsia, ザンさん(右)
(C) zing, ChannelNewsAsia, 点字のついた職場のコーヒーメーカー
(C) zing, ChannelNewsAsia, 点字のついた職場のコーヒーメーカー
 シンガポールを本拠地として東南アジア各国でタクシー配車・予約サービスを展開するグラブ(Grab)(旧社名:グラブタクシー=GrabTaxi)には、ただ1人、盲目のプログラマーがいる。400人近い候補者の中から採用された8人中の1人、ベトナム人のグエン・ザンさんだ。

 ザンさんは、何回もの面接やプログラミングテストにパスし、グラブで初めてかつ唯一の盲目のプログラマーになった。ザンさんは今、アンドロイドのオペレーティングシステム上のアプリケーションや、自身のような視覚障がいを持つユーザーをサポートするためのアプリケーションを作成している。

 「私は普通の生活を送り、好きなことをしたいたいだけです。特別な人になんてなりたくありません。」とザンさんは話す。ザンさんはホーチミン市で4人家族の1人として育った。ザンさんにとって、盲目であることも勉学において大したネックとはならなかった。

 高校生のとき、ザンさんは勉強に少しも興味がなく、本を読むことと友人と遊ぶことに時間を費やしていた。しかしザンさんは、自身が「障がい者はお粥も何も作れない」というベトナム社会の偏見の目にさらされていることに気が付いた。そこで、同じく盲目の友人の励ましを受けて、自身のキャリアでこの偏見を打ち破ることに決めた。

 ザンさんと友人の2人がまず成し遂げたのは、大学に合格することだった。2人はホーチミン市国家大学の国際大学に入学した。当時、2人は同大学で初めての盲目の受験生だった。ザンさんは計算機科学(コンピュータ科学)を専攻し、勤勉さと数学への情熱のおかげで優秀な成績を修めて卒業した。

 さらに、学校と両親のサポートにより、シンガポールでの研修と就職のための奨学金を得た。「私はシンガポールについて、アジアの中心で、才能のある人々が世界中から集まる場所だということしか知りませんでした。本当にすばらしい機会を得ました」とザンさん。

 またしても友人の誘いでザンさんはグラブの求人に応募。2人は面接に進んだ。「あのとき、面接官に『プログラミングができますか?あなたたちにできるかどうかわかりませんが』と言われたらどうしよう、と私たちはとても不安でした。幸い、面接官は私たちの専門知識について聞いただけでした」とザンさんは振り返る。

 当時、ザンさんは3か月間にわたるインテル(Intel)でのインターンシップを終えて、キャプチャ(Captcha)関連の仕事をしていた。そんな中、彼の自信とカリスマ、そしてユーモアは、グラブの採用担当者に強い印象を残した。ザンさんの採用担当者は、「彼を採用すべきかどうか、彼と一緒に働くとなるとどうなるのか。採用担当のリーダーがたずねると、担当者は皆『採用しましょう』と答えました」と語った。

 2017年2月にグラブへ入社したザンさん。以来、グラブはザンさんの職場となる研究開発部が入ったビルのエレベーターのボタンや、コーヒーメーカー、デスク、食堂などあらゆるものや場所に点字を貼り付けた。ザンさん自身も、シンガポールに移り住んで、文化や生活環境に適応する方法を学ばなければならなかった。

 ベトナムとシンガポールの両国でザンさんが好きでないことの1つは、彼が通りがかると皆がお金を渡そうとすることだという。「私には仕事をする能力があります。他の普通の人と同じように、平等に扱って欲しいんです。私にお金を渡したいのであれば、現金を渡すのではなく、私を1000USDで雇ってください」とザンさんは語る。彼の友人たちも、ザンさんにおごろうとすることがある。しかし、ザンさんはいつも断っている。

 ザンさんがまず一番変えたいのは、自身の故郷、ベトナムだ。ベトナムの多くの銀行は、現金自動預け払い機(ATM)を利用することができないとして、視覚障がい者に対して銀行口座の開設を認めていない。皮肉なことに、視覚障がい者にとって現金を扱わない取引こそが最良の方法だ。そのため、ザンさんは多くの銀行を説得し、この問題を解決することができたのだった。

 ザンさんは今後、視覚障がい者向けにグラブの新しい地図システムを作成し、彼らの専用の画面に組み込む予定だ。「全てを作り出すことができる、という感覚が好きなんです」とザンさんはプログラミングの楽しさについて語る。そして彼の私生活について、どのようなパートナーを選ぶかたずねると、ザンさんは恥ずかしそうに答えた。「独立心があって、常に自分自身を向上しようとする女性が好きです。例えば私のような、ね」。 

[Anh Thi, Zing, Channel News Asia, 10:28 19/10/2017, A]
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