[特集]
ホーチミン中心部のビル大火災から15年、生存者が命の恩人に再会
2017/10/29 05:08 JST更新
(C) vnexpress |
ホーチミン市では、都市化が進むにつれて火災事故が増加の一途を辿っている。直近の最も深刻な火災は、2002年10月29日に同市1区にあった国際貿易センタービル(ITCビル)で起きたものだ。
ショッピングセンターやオフィス、ディスコ、レストランなどを併設した6階建てのITCビルは、1区中心部のレタントン(Le Thanh Ton)通り、グエンチュンチュック(Nguyen Trung Truc)通り、ナムキーコイギア(Nam Ky Khoi Nghia)通りに囲まれた一等地に立っていた。
この大火災では外国人を含めた60人が死亡、約70人が負傷した。深刻な人的被害を出したこの事故をきっかけに、同市当局は消防警察部隊向けの投資を強化するようになった。
国内大手ニュースサイトのVNエクスプレス(VnExpress)は、大火災から15年が経過した10月下旬、当日に被害者と救助者として現場に居合わせた男性2人の感動的な再会を実現させた。2人は生死の境目の運命の瞬間に出会い、互いに名前も住まいも知らないまま15年が過ぎていた。
2人の再会の場所となったのはVNエクスプレスの編集部。再会したのは、ITCビルの2階にあったディスコ「ブルー(Blue)」でDJをしていたグエン・カイ・ディンさんと、現場に出動したはしご車を運転していたヒュン・バン・フォンさんの2人だ。ディンさんは最後に救出された生存者だった。
大火災が起きたのは、青空が広がり日差しが照りつける13時過ぎのことだった。夜のパフォーマンスに向けてDJの練習をするため、階段を上ってディスコに向かっていたディンさんは、ビル内に炎が上がっているのを発見した。火災発生時のビル内には、49のオフィスの従業員やレストランの客など数百人がいた。火元はディスコだった。
ディンさんは嫌な予感がし外へ逃げようとしたが、3階にディスコのオーナーの女性と従業員たちがいることを思い出し、階段を駆け上がって皆に火災を知らせた。自分も逃げようと階段を下りようとしたが、既に火の手は大きくなっており、下へ逃げることができず屋上へ向かった。この時、約20人が同じように上階に逃げた。
逃げ道を必死に探していたディンさんは、屋上に上ってから約30分が経ったころ、まわりに誰もいなくなっていることに気付いた。そしてディンさんは、「皆、飛び降りて死んでしまったんだ」と思ったという。
絶望の中、ディンさんは祈るしかなかった。そのときディンさんはグエンチュンチュック通りを見下ろせる場所を発見し、Tシャツを目印にして地上の人々に助けを求めた。すると1台のはしご車がディンさんの居場所の真下に配置された。
フォンさんははしご車を運転していた際、ディンさんが高さ25mのトタン屋根の上ででん部と手足を火傷しながら救助を待っているのを発見し、安全ベルトや防火服もないままはしごを登ってディンさんを救出したのだった。
ディンさんは、「屋根の上はフライパンのようで、私はまるでその上に乗った肉のようでした」と振り返る。そんな彼は15年ぶりに命の恩人と再会し、心からの謝辞を述べた。
これに対してフォンさんは、「やるべきことをやっただけです。立派な人になってくれて何よりです」と話した。フォンさんにとってディンさんが初めて救出することができた被害者だったこともあり、フォンさん自身もずっと彼との再会を望んでいたのだという。
ディンさんは救出されてチョーライ病院に救急搬送された直後、同せいしていた恋人から妊娠していることを告げられた。双子の父となった彼は、「助けられたことを心に刻んで、責任を持って生きています」と話す。
ITCビルは大火災の後に取り壊され、跡地は長らく駐車場として使用されてきたが、ベトナム不動産インフラ開発グループ(VIPD)傘下のサイゴン・キムクオン社(Saigon Diamond)が2016年12月に複合施設「SJCタワー(SJC Tower)」案件を着工した。
同案件は、地下6階建て、地上54階建て、高さ200mの規模で、ショッピングセンターやオフィス、マンション、レストラン、ホテルなどの施設を併設する。投資総額は5兆3000億VND(約266億円)。4年後に完成・開業する見通しだ。
なお、ホーチミン市消防警察機関によると、2017年1~6月期に同市で発生した火災事故は2364件に上り、2016年通年の8割に相当するという。これにより、51人が死亡、95人が負傷している。
[Vnexpress, 27/10/2017 | 01:49 GMT+7, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.
このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。