[特集]
路上でテレビを解体して20年、家族を支える老婆
2017/05/14 05:57 JST更新
(C) vnexpress |
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この数十年間、ホーチミン市に住むカオ・ティ・トゥイさん(女性・76歳)は、精神病を患う息子を育てるため、そして病気の夫に薬を買うため、路上に座り、古いテレビを解体して取り外した部品を売っている。
トゥイさんの「職場」は、ホーチミン市10区にあるビンビエン通りとリートゥオンキエット通りの角だ。メコンデルタ地方ティエンザン省出身のトゥイさんは、ここで20年間にわたり故障したテレビの部品を解体し、分類して売ることで生計を立てている。
以前、トゥイさん夫婦は故郷のティエンザン省からホーチミン市へ出てきて、日用品やご飯を売ったり、電器店を開業したりしたが、大きな損失を出してしまった。そんな時、ある人が「古いテレビを売買してみてはどうか」とアドバイスをくれたことがトゥイさんの運命を変えることとなった。
トゥイさんはこう語る。「最初は機械のこともさっぱり分からず、子供たちから部品のチェックと解体のやり方を教わりました。今では自分で部品も解体できますし、マザーボードの機能も理解できます。いつの年代のものなのか、どこ製のものなのかなどもきちんと区別できます」。
当時、ニャットタオ通りとビンビエン通りでは、多くの人が古いテレビを売買していたが、今日までこの仕事を続けている人はベテランのトゥイさんを含む数人だけだ。トゥイさんは毎日 10時から夕方まで路上に座り、テレビを買い取り、部品を解体している。
毎日、多くの人が故障したテレビを売りに来る。ほとんどが古いタイプのテレビだ。一番高いもので1台15万VND(約750円)で買い取る。トゥイさんが1日に買い取り、部品を解体するテレビの数は平均して約15~20台に上る。
トゥイさんは、「この仕事は賭けです。買い取ったテレビの故障の具合がどのくらいなのか分からないからです。売る人はその場で中身を見せてくれません。部品の中で高く売れるのは、マザーボード、スピーカー、銅線です。もし不運にもマザーボードが焼けていたら、売上の半分を失うようなものです」と話す。
トゥイさんは解体した部品のうち、スピーカーを2万VND(約100円)、マザーボードを4万~6万VND(約200~300円)、カバーを1kg当たり4000VND(約20円)で転売する。中でもスピーカーとマザーボードが最もよく売れるという。トゥイさんは、「解体したテレビ1台から得られる利益はわずか2万VND程度です」と教えてくれた。
「昔は1kg当たり10万VND(約500円)で売れた銅ですが、今はたったの8万VND(約400円)です。テレビの電球も昔は1個1000VND(約5円)でしたが、今は廃品回収の女性にあげてしまうだけです」とトゥイさん。
トゥイさんの仕事を手伝っているのは、末っ子のフイン・フオン・タムさん(男性・31歳)。タムさんは軽度の神経障害を有しており、今もまだ独身だ。タムさんは安定した仕事に就くことができないため、毎日母親のトゥイさんを手伝っている。
トゥイさんには8人の息子と1人の娘がおり、一番上はもう60歳近い。現在トゥイさんは夫と2人の息子と一緒に暮らしている。2人の息子のうち、タムさんの兄にあたるフイン・フオン・タイさん(男性・35歳)は15年間にわたり統合失調症を患っており、トゥイさんは食事から入浴まで、タイさんの世話をしなければならない。
トゥイさんの夫も高齢で、事故で足に後遺症が残っているため仕事がない。「テレビを解体する仕事で得られる収入約500万VND(約2万5000円)から家賃を引くと、うまく家計をやりくりしないと家族は生活できません」とトゥイさんは教えてくれた。
トゥイさんが一番心配しているのは、解体場所の付近で行われている建設工事が終わったら、別の場所へ移動しなければならないことだという。トゥイさんは、「私もどこへ行けばいいのか分かりません。万策尽きた場合は、田舎へ戻って野菜を売るしかないでしょう」と悲しみの表情で語った。
[Quynh Tran, 00:00 (GMT+7), 18/4/2017, A]
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