[特集]
20年間茂みで眠り、ひったくり犯確保に活躍するバイタク男性
2017/02/19 05:34 JST更新
(C) vnexpress, Manh Tung |
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独り身のグエン・バン・ミンさんは、ホーチミン市トゥードゥック大学の学生街にあるダー湖周辺にハンモックを張り、茂みの中で眠っている。ひったくり犯を捕らえ、学生たちの財産を守ることが日々の喜びだ。
テト(旧正月)の間、ミンさんはトゥードゥック区と東南部地方ビンズオン省ジーアン町に隣接する大学周辺でバイクタクシーをしていたが、学生たちは皆故郷に帰ってしまい、人影もまばらで普段よりも寂しかったという。
20年近くここに住み、56歳になるミンさんにとって最も大事な財産は、1台の古いバイクと、ホーチミン市国家大学の都市区開発管理センターから贈られた治安維持の功績を讃える感謝状だ。
ダー湖沿いのカフェでコーヒーを飲みながら、ミンさんは若い青年たちがバイクをふかしながら走らせる様子を目で追っていた。「ひったくりを犯しそうな疑わしい人がいれば、私はすぐにバイクを走らせて後を追います。旧正月の時期は一番窃盗が多いのです」とミンさんは決意を込めて話した。
ミンさんは2016年の旧正月6日目の22時頃に起きた事件について話してくれた。その時、学生街の道路は人気がなく静かで、1組のカップルが湖沿いのベンチに座って話していたという。
バイクタクシーの客を待っていたミンさんは、バイクに乗った2人の若者が湖の側に停車し、そのカップルに殴りかかる様子を目撃した。ミンさんはすぐに木の棒を持ち助けに行ったが反撃に遭い、しばしの格闘の後に犯人たちは逃げてしまった。しかし犯人たちは後日警察に捕まったそうだ。
「実は、私はその犯人たちを午後から見張っていました。彼らはダー湖からノンラム三叉路までバイクをフラフラと走らせ、獲物を探していたのです。私は彼らが行動を起こしたらすぐに動けるよう待っていたのです」とミンさんは誇らしげに笑って話してくれた。
またある日、ミンさんが客を迎えに行くためにバイクを走らせていると、自然大学の前の道路で猛スピードでバイクを走らせている若者たちの集団に遭遇した。その集団は雑貨屋の前に急停車し、それから1人が店の前に駐車されていたバイクの鍵を破壊した。
その犯人たちが盗んだバイクで逃げようとする様子を見て、ミンさんは急いでバイクで彼らに突っ込んだ。しかし、若者の集団はミンさんを襲撃した後、逃げてしまった。「殴られて体中に打撲を負いましたが、バイクを守ることができたのは幸運でした」とミンさん。
ひったくり犯たちと何度か闘ったことでミンさんが受けた傷は少なくない。流血し、擦り傷ができるたびに、ミンさんは自分で薬と包帯を買って処置をしている。
ミンさんは自分の体に刻み込まれた傷跡1つ1つからそれぞれの事件を思い出すことができるという。「何人かと一緒に5~6人のひったくり犯を捕まえた時、奴らに激しく蹴飛ばされ、脚に致命的な怪我を負いました」。ミンさんは話しながら、足首にある傷跡を指差した。
ミンさんは文字の読み書きができず、父親や先祖の故郷がどこかも知らない。唯一覚えているのは、過酷を極めた戦争の間に家族と離れ離れになり放浪していたところ、養ってくれる優しい人に出会えたことだ。しかし、10歳の時に育ての母に叩かれたことを境に家を出てからは、転々としながら生活を続けている。
30歳のときにミンさんはホーチミン市9区に辿り着き、スクラップ収集の仕事から雇われの仕事まで様々な仕事をして生計を立てていた。その10年後に大学周辺でバイクタクシーの仕事を始めて現在に至る。
家はなく、部屋を借りるお金もないため、ミンさんは木の枝にハンモックを吊るして寝ている。天候が悪い時はさらにビニールシートを張り、雨風を防ぐ。毎日バイクタクシーとパンク修理の仕事をして、食事の他にコーヒーと薬を買うのに十分な3~4万VND(約150~200円)を稼いでいる。
ミンさんはこう語る。「貧しい学生がいれば、私は無料でパンク修理をします。学生たちは子供のような年齢なので、私は学生たちをとても可愛がっています。助けられることがあれば助けてあげたいのです」。
[Manh Tung, VnExpress, 30/1/2017 | 00:00 GMT+7, A]
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