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[特集]

YouTubeで化粧品業界に革命、越僑メイクアップアーティスト

2016/09/18 05:00 JST更新

(C) vnexpress
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 今日の女性たちは、化粧品店でカウンセリングを受けるより、インターネット上にアップされているメイク講座の動画を見る方を好む。こうした動画を制作し、化粧品業界に革命を起こしたのがベトナム系米国人でメイクアップアーティストのミシェル・ファン(Michelle Phan)さん(29歳)だ。  「みなさん、こんにちは!ミシェルです」。米国カルフォルニアにあるイプシー(ipsy)のオープンスタジオに入り、ミシェル・ファンさんはさわやかに挨拶した。イプシーはファンさんが4年前に共同で立ち上げた化粧品ブランドだ。  メイク講座動画の世界で、ファンさんは、最も影響力のある人物だという。ファンさんは2006年からYouTubeに自身のメイク方法をアップするようになり、有名になった。現在、YouTubeの彼女のチャンネルには800万人もの視聴者がおり、ファンさん自身も数年前から大きな利益を得ている。  現在、彼女はイプシーを通じて、自身の成功に続く多くの人々を支援している。昨年5月、イプシーは自分で動画を撮影する人たちのために、カメラや照明など多くの近代的設備を備えた900m2のスタジオを開設した。  ファンさんは、メイク講座動画で有名なだけでなく、敏腕な経営者でもある。彼女は著書の中で、現在、高品質な映像ネットワークとレコード会社を立ち上げているところだと記している。とはいえ、彼女が最も重視し、且つ現時点で最も収益性の高い事業はイプシーだという。  イプシーは各化粧品のサンプルサイズを同梱する「グラムバッグ」を毎月10USD(約1030円)で定期販売しており、現在の登録者数は150万人に上る。昨年秋には、2社から総額1億USD(約103億円)の資本提供を受け、イプシーの総資産は現在8億USD(約820億円)と評価されている。  これを受けて、ファンさんと同社CEOのマルセロ・キャンベロスさん、社長のジェニファー・ゴールドファーブさんらは、多忙な日々を送っている。また、彼らはファンさんが2年前に立ち上げた別の化粧品ブランド「エム(Em)」を世界最大の化粧品会社ロレアル(L’Oreal)から買収し、利益を上げている。

 彼らの野望はこれに留まらない。イプシーと同じくサンプルサイズの化粧品定期販売を手掛けるバーチ・ボックス(Birchbox)では、フルサイズの商品が同社利益の35%を占める中で、イプシーは依然として毎月のサンプルサイズセット登録者数を増やすことに集中している。  彼らは、化粧品市場は個人化の流れによってさらに成長を続けると予測し、イプシーが美容カウンセリングを受けたい人たちの集合場所になることを目指している。  これを実現するため、イプシーはビデオブロガー(vlogger、インターネット上でビデオブログを配信する人たち)向けのネットワーク構築に大きな投資をしている。ここでは、会員たちが毎月イプシーに関する動画を制作し、配信する。「彼らはただ毎月イプシーに関する内容のビデオを制作するだけで、後は彼ら次第です」とファンさん。  こうした活動により、インターネット上でイプシーは日に日に存在感を増し、もはや広告に大きな費用をかける必要はない。また、ビデオブロガーたちは動画撮影にイプシーのオープンスタジオを使うことができる。スタジオでは同業の人と知り合うことができるほか、知名度を上げたり、多くのイベントに関わることもできる。  イプシーによると、化粧品業界は現在、変革期を迎えているという。特に若い世代の女性たちはもはや、ショッピングセンターの化粧品カウンターや有名人を起用したブランドの店舗に出向いてカウンセリングを受けることを好まない。代わりに、彼らはインターネット上でファンさんのような美容専門家が制作するメイク講座の動画を探すのだ。  あるメディアが行った最近の調査によると、13歳から24歳までの女性たちの60%がYouTubeにアップされた個人ページを通じてメイクのアドバイスを受けているという。「美の基準、定義は変わりました。全ての人に向けた画一的なアドバイスはもはや需要がありません」とファンさんは話す。

 こうした動きは、大手競合と比べてマーケティング費用が少ない小規模の化粧品会社にとって、画期的なチャンスとなっている。また、大手の化粧品会社も積極的にソーシャルメディアを活用するようになっている。動画を制作するビデオブロガーたちの評価によって、商品の良し悪しを知ることができる点もメリットだ。  ソーシャルメディアの活用に不慣れな会社に対して、イプシーは彼らの商品が消費者の手に渡り、正しい使用方法をアドバイスできるよう橋渡しの役割も担う。代わりに、これらの化粧品会社はイプシーのグラムバッグに無料で商品を提供している。そしてイプシーは、商品を使用した顧客からの反応を各ブランドに詳細にフィードバックしている。  しかしながら、イプシーにも困難がないわけではない。消費者はオンライン上のメイク講座を見た後に、それでも普通の店舗で商品を買うことがある。専門家によると、イプシーやバーチボックスなどの化粧品のオンラインサービスを利用する人は、18歳以上の世代の女性の5%に満たないという。こうした中、イプシーは、米国でイベントを開催するなどして顧客コミュニティの拡大に注力している。  「イプシーがニューヨークで開催したイベントには、850人のビデオブロガーと3000人の顧客が150USD(約1万5500円)の入場券を購入し、参加してくれました。更に、多数の化粧品ブランドの参加もありました」とイプシーCEOのキャンベロスさんは教えてくれた。  キャンベロスさんはファンさんについて、「イプシーの魂」だと話す。経営業が多忙であってもファンさんは毎週、自らビデオに登場する。彼女はイプシーの理念を体現する大きな存在なのだ。ファンさんは、「新しく登場する媒体もあれば、次第に消えていくものもあります。でもコンテンツは永遠です。お客様がどこに行っても、私はお客様の行く先に行きます」と語った。 

[2016年9月16日 ベトジョーニュース A]
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