[特集]
ゲイン鉄道橋、人々の100年余りの思い出―崩落事故で再建へ
2016/05/15 05:10 JST更新
(C) vnexpress, Phuoc Tuan, チャウさんとゲイン橋(2011年) |
(C) vnexpress, Panoramio, かつてのゲイン橋 |
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東南部地方ドンナイ省ビエンホア市を流れるドンナイ川に架かるゲイン(Ghenh)鉄道橋。この橋は、今から1世紀以上前にフランスのエッフェル社(Eiffel)によって設計された。現在ではビエンホア地域の象徴となり、人々の幼少期からの思い出がつまった橋となっている。
しかし、2016年3月20日、ドンナイ川を航行中だったバージ船(艀船)とそのタグボートが衝突し、この
橋が崩落する事故が発生した。この事故で、橋を通過する南北統一鉄道の線路は寸断。鉄道や水路に重大な影響を及ぼしただけでなく、多くの住民を悲しませた。現在、7月の開通に向けて橋げたの再建工事が進められている。
ゲイン橋の着工から鉄道開通まで
「ドンナイ省ビエンホア、300年間の形成と発展(Bien Hoa - Dong Nai 300 nam hinh thanh va phat trien)」(ドンナイ出版)によると、1901年に国道1号線とビエンホアを通過するサイゴン~ニャチャン鉄道が着工された。同じ時期、フランスによって現在のドンナイ省ビエンホア市ヒエップホア村にあたるフォー小島(Cu lao Pho)の西北端で、ゲイン橋の建設が進められた。
20世紀初頭、ビエンホアを通る国道は道幅が約5mと狭く、石が撒かれ仮舗装されているだけだった。その一方で、橋はコンクリートと鉄筋で建設されていたため、とてもしっかりしていた。1903年、同じくエッフェル社によって設計・建設され、同じくドンナイ川に架かるザックカット(Rach Cat)橋と共に、ゲイン橋が完成した。
ゲイン橋は、幅の広い川に架けるため、大きな石でできた3つの柱で支えられていた。橋げたは4つのアーチが繋がった形で、人々はこの橋を「4つの橋げたの橋」と呼んだ。ゲイン橋の外観は、北中部地方トゥアティエン・フエ省フエ市で1899年に完成したチュオンティエン橋によく似ていた。チュオンティエン橋もエッフェル社が手掛けたものだ。
1904年1月14日、ゲイン橋の完成によりサイゴン~ビエンホア区間を結ぶ鉄道が開通し、程なくして毎日2本の列車が運行されるようになった。ビエンホアをほぼ並行して走っていた鉄道と国道1号線の2本の道は、省都からバウカー(Bau Ca)やチュアチャン(Chua Chan)山など閉ざされていた森の奥まで入り込み、天然資源の開拓にも貢献した。
「ドンナイ地誌(Dia chi Dong Nai)」(2001年、ドンナイ総合出版)によると、ゲイン橋の完成後、◇サイゴン~ビエンホア区間(1904年、71km)、◇サイゴン~スアンロック区間(1904年、81km)、◇スアンロック~ザーザイ区間(1905年、18km)、◇ザーザイ~ムオンマン区間(1910年、77km)、◇サイゴン~ニャチャン区間(1913年、408km)といった鉄道路線が次々に開通している。
ゲイン橋の完成によって鉄道の各路線が開通しただけでなく、フォー小島にとってはサイゴンやビエンホアとの交易も容易になった。以前は市場に行くために船で水路を渡っていたが、ゲイン橋が完成してからは牛車や馬車で橋を通過できるようになったのだ。それまでフォー小島は住民も疎らだったが、ゲイン橋の完成と共に住民も再び増え始め、今日まで発展を続けている。
2016年3月20日のゲイン橋崩落事故
ビエンホア市ヒエップホア村在住のレ・バン・チンさん(男性・80歳)は、 ゲイン橋が崩落したというニュースを聞き、橋のふもとのカフェから慌てて外に出た。橋げた2つがドンナイ川に崩落しているのを見て、チンさんは「橋が崩落してしまった!私の思い出が!」と叫んだそうだ。
チンさんの親戚はゲイン橋の建設に携わった1人で、建設に使われた3つの石材が今でも家の軒先に置いてあるのだと教えてくれた。
同市ブウホア街区在住のボー・ホン・チャウさん(男性・89歳)もまた、幼少期の頃からゲイン橋に親しんできた。子供の頃、チャウさんはゲイン橋を歩いて渡ってビエンホアの学校に通っていた。また、祖父から橋の建設時の話もよく聞いていた。「橋が開通した日はお祭り騒ぎだったと祖父が教えてくれました。当時、橋や列車はとても珍しかったのです」とチャウさんは語る。
また、ゲイン橋のふもとにあるグエンチーフオン寺の近くに住んでいる人々にとって、ベトナム戦争が終結する直前の1975年4月に激戦から橋を守り抜いた日々のことは忘れられない思い出だ。「私たちの部隊は、橋を崩落させようとする敵の企てから橋を守りました。でも、この橋を守るためにたくさんの兵士が命を落としたのです」と、同街区在住のグエン・ティ・ライさん(女性)は教えてくれた。
同街区在住のグエン・タイン・フイさん(男性)は、「私にとって馴染み深い橋の橋げたが川に崩落しているのを目の当たりにしました。小さな頃は毎日、橋を通過する列車を見るため祖父と川岸まで行っていましたし、大人になってからも友達とよく川の周りをぶらぶらしていました。橋が早く再建されるよう願うばかりです」と話す。
数年前、ドンナイ省文化スポーツ観光局は、ゲイン橋を省級歴史遺産に認定するよう同省人民委員会に提案しようとした。しかしながら、意見聴取の段階で交通運輸省の同意を得られず立ち消えとなった。
また、ゲイン橋では2011年にも事故が起きており、交通運輸省はその後、橋の道路部分の通行禁止を決定した。これに対して同省人民委員会は、住民がビエンホア市と東南部地方ビンズオン省の間をバイクで行き来できる通路を残すよう、再び請願書を提出したという。
[Trung Son-Hoang Truong, VNExpress, 23/3/2016 | 00:00 GMT+7, A]
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