[特集]
ベトナム初の5つ子ちゃんを生んで、母が語る子育ての道のり
2015/12/06 05:04 JST更新
(C) dantri, 5つ子ちゃん |
(C) dantri, トゥーさん |
(C) dantri, 義母キムさんと5つ子ちゃん |
(C) dantri, 5人の食事には近所の人の手も借りる |
たった1人の子どもでも、産み育てるということは母親にとって様々な試練を伴う。しかしながら、ホーチミン市5区に住むレ・フイン・アイン・トゥーさんは、5人の子どもを同時に産み育てている。トゥーさんは、ベトナムで初めて且つ唯一の「5つ子ちゃん」の母親だ。
同区チャンビンチョン(Tran Binh Trong)通りの細い路地裏にある広さ10m2ほどの家に足を踏み入れると、子どもたちの笑い声や互いに呼び合う声が聞こえてくる。初めて訪れる人は、ここを保育園と勘違いして、この可愛らしい5人の子どもたちが一人の母親から同時に生まれた5つ子だとは到底思わないそうだ。
5つ子は、上からそれぞれ「カー(Ca=長子)」「ハイ(Hai=2番目の子)」「バー(Ba=3番目の子)」「トゥー(Tu=4番目の子)」「ウット(Ut=末子)」のあだ名で呼ばれている。
トゥーさんの夫、グエン・タイン・ヒエウさんはタクシー運転手。24時間、365日、休みなく働いて家族を支えている。家に居られる時は、子どもの世話や送り迎えをこなす。
5つ子の母親、トゥーさんは回想する。「私と夫は親族の仲立ちで知り合って、半年ほどで結婚しました。その後2年間子どもができず、病院で受診するとお医者さんに多嚢胞性卵巣症候群と診断され、妊娠したいならば人工授精の必要があると言われたのです」。
経済的な理由から人工授精という方法は選択できず、彼女にできることは、多胎妊娠のリスクを警告されながらも、ただ自然な妊娠を願い続けることだけだった。そのため、妊娠が分かった時は家族一同、喜びの絶頂だった。
しかし、多胎妊娠とわかり、その知らせを聞いた家族ははじめとても心配した。初めてのエコーで3つ子だと言われ、妊娠4か月の時に4つ子であることが判明した。母子の身体への危険を避けるため、医師は減胎手術を勧めた。
「2年以上も待ち望んだ妊娠だったので、私も夫もそうする気にはなれませんでした。子どもは多ければ多いほど嬉しいと話し合い、頑張ることにしたのです。・・・まさか5つ子だとは思いもしませんでしたが」。トゥーさんはそう語る。
トゥーさんは、他の妊婦と同様、妊娠初期にはつわりがひどく食べたり飲んだりするのも困難だったという。出産間近になるとお腹は太鼓のようにものすごく大きくなり、歩くのも困難で、横になっているだけでも疲れるほどだった。
母子の安全を確保するため、医師が危険な徴候を事前に予測できるよう妊娠33週から同市1区にあるツーズー産婦人科病院に入院したトゥーさん。母親の子どもたちに対する愛情と、医師チームのサポートのおかげで、ベトナム初の5つ子は無事に帝王切開によって誕生した。
5人の子どもを同時に育てるのは簡単なことではない。最初の1か月は、毎日午後になると病院から看護師が派遣され、沐浴の補助をしてくれた。新生児の沐浴は経験を要するため、5人を一緒に入れるのは無理があるからだ。その後はトゥーさんと義母が交代で1人ずつ風呂に入れていった。
「思い起こすと、生まれて間もない頃は私も義母も明らかに体重が落ちました。毎晩、子どもたちを交代でみなければならないので、2~3時間しか眠れなかったのです。子どもたちが泣く声を聞いては飛び起きてミルクを作っていました」。
5人の子どもの世話は、とにかく目が回らんばかりだった。毎日、夜が明ける頃から起きてミルクを作り、おむつを替え、洗濯をし、授乳をして寝かしつけ、食事の準備をし、子どもたちの様子を見守り・・・これが昼夜問わず続くのだ。それでも子どもたちへの果てしない愛情が、母と祖母の疲れを吹き飛ばし、2人を幸福な気持ちにさせた。
子どもたちが1歳になると、あまりに大変そうな娘を見て、トゥーさんの両親が子どもたちのうち2人を実家に連れて帰って世話してくれることになった。しかし2人がいなくなって数日すると、残りの3人が悲しがって泣く。皆と離れた2人も母や兄弟が恋しくて泣き、とうとうまたホーチミン市に連れて帰ることになったのだった。
2歳近くになると、保育園に行かせるようになった。毎朝、夫のヒエウさんが出勤前に子どもたちを保育園へ送り届ける。2つの園に5人をそれぞれ送るには、バイクで3往復しなければならず、ヒエウさんは近所の人の手を借りる。
多くの人が、5つ子は身体が弱くて、互いに感染するので病気にかかりやすいだろうと言うが、祖母や両親の苦労を知ってか、トゥーさんの子どもたちはめったに病気をしないという。
「季節の変わり目だったこの間は、5人が次々と病気にかかり、私たち夫婦や義母にまで感染して大変でした。私と義母は看病で一晩中眠れませんでした。近所の第1児病院の医師に来てもらい、薬を飲ませてもらうとたちまちに良くなったのですが」とトゥーさんは語った。
大変でも幸せな日々の中、夫婦にとって最も大きな心配事は養育費だ。ヒエンさんの会社からも補助が出るが、5人を育てるのに毎月2000万VND(約11万円)近くかかっている。病気になれば、更に費用がかさむ。
「まだ小さいうちは、頑張れば何とかなります。でも、これから子どもたちが大きくなり学校に行くようになっても、十分なお金がなかったらと心配でたまりません。私たち親の願いは、子どもたちが学校に行って手に職をつけて、自立してくれること、それだけです」。5つ子の子育ての道のりは、まだまだ長い。
[Le Nhien – Thanh Hoa, Dan Tri, 20/10/2015 - 10:38, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.
このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。