[特集]
「港のかご舟タクシーおばさん」、電話1本で沖の漁船へ何でも運送
2015/04/05 05:57 JST更新
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南中部沿岸地方クアンガイ省ビンソン郡ビンタイン村サカン港には、竹製の丸いかご舟を手で漕いで、沖の漁船へ荷物を運送している女性たちがいる。彼女たちは漁師から「タクシーおばさん」と呼ばれて親しまれている。荷物を運ぶだけの単純な仕事だが、彼女たちの収入は決して少なくない。
このかご舟は、ベトナム語でトゥエントゥン(thuyen thung)という。竹を編んで、防水のために牛糞を混ぜたもので表面全体を塗り固めただけの簡素な作りだが、手漕ぎでかなり沖まで行くことができる。
サカン港の漁師で「タクシーおばさん」の電話番号を知らない人はいない。沖に出た漁船で、弁当やコーヒー、タバコなどが欲しくなった時や人手が必要な時、この「タクシーおばさん」に電話をかければ、あっという間に依頼した物や人がかご舟で運ばれて来る。
沖で漁船の修理をしていたある漁師は、おもむろに携帯電話を取り出し「タクシーおばさん」に電話をかけた。「釘8kgとネジ3kgを頼む。あと弁当を33人分よろしく。」そして15分後、「タクシーおばさん」はかご舟を漕いで、漁師の依頼したものを運んで来た。
「タクシーおばさん」は、記憶力も抜きん出ている。電話を受けて、漁船の船体番号の下2桁を聞いただけでその漁船の船長から現在位置まで瞬時に全てわかるという。
「タクシーおばさん」の収入は、1日当たり平均約30万VND(約1700円)。漁船が出港する日には、1日100万VND(約5600円)余りに上ることもある。漁船へ人を運ぶ場合には1回1万VND(約56円)。弁当やコーヒーなどを運ぶ場合には、注文の手間賃を含めて1人分でも100人分でも1回3万VND(約170円)を受け取っている。
「タクシーおばさん」歴20年余りのブイ・ティ・バンさん(52歳)は、1991年に夫が海で行方不明になってから、生計を立てるためにこの仕事を始めた。この仕事をしながら2人の子供を育て、2人とも大学へ入ることができた。
かご舟での運送には、海岸と漁船の間の行き来のみで料金が発生する。漁船から他の漁船までの海上運送であれば、全て無料だ。漁師たちにとってこの「タクシーおばさん」は、沖で何かあればすぐに現れる、なくてはならないスーパーマン的存在となっている。
[Tran Mai, Tuoitre, 08:23(GMT+7) 22/03/2015, A]
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