[特集]
地雷被害者の男性、竹とんぼに託した夢
2014/06/01 08:24 JST更新
(C) thanhnien, グエン・ドゥック・フインさん(左)とミスベトナムのトゥイ・バン(右) |
北中部クアンチ省ドンハー市在住の地雷被害者の男性グエン・ドゥック・フインさん(25歳)は、同じような境遇にある人達のためにも、自らの人生を変えたいと奮闘している。指先で揺ら揺らゆれながらバランスをとる色とりどりの竹とんぼに願いを込めて。※ベトナムの「竹とんぼ」は竹でできたトンボのおもちゃで、指先などに載せて遊ぶ。
フインさんは地雷の爆発により、顔などに大やけどを負ったが、塞ぎ込むこともない快活な性格の持ち主だ。決して卑屈になることはなく、自信に溢れ、常に毅然とした態度をとっている。彼は、徐々に現実に近づいてきた自身の夢について力強く語ってくれた。
彼が悲劇に見舞われたのは幼年時代のことだ。地雷というベトナム戦争の置き土産は、彼の幼年時代を奪い去り、病床で生死をさまよう日々へと陥れた。その後、なんとか一命はとりとめ、心ある人たちの支えと医学の進歩のおかげで、彼は「顔」を取り戻したが、当然元通りのものではなかった。
成長した彼はハノイ電力短期大学で学んだが、卒業後就職先を見つけることは出来なかった。不採用の理由は殆どが彼の外見によるものだった。将来に不安を募らせる日々が続く中、ふと立ち寄った土産物屋で見つけた色鮮やかな竹とんぼが、彼に子供時代の記憶をよみがえらせた。
「誰しも生まれてきてすぐに色々なことが自分で出来るわけではなく、師を探すものです。あの日、偶然見かけた竹とんぼが私に道を示してくれました。あれ以来、私の頭は竹とんぼのことしか考えられなくなっています。竹を選び、成形して組み立て、彩色し納得の行く形に仕上げる。他の職人たちから褒めてもらえれば上出来です」フインさんはそう語る。
フインさんが竹とんぼにかける夢は自分だけのためのものではない。それはまさに同じような境遇にある人にとっての希望であり、生活を支える収入にもなり得るのだ。竹とんぼづくりを習得してドンハー市に戻った彼は、さっそく5人の障害者に作り方を教えた。
こうしてフインさんの実家に小さな竹とんぼ工房が誕生した。共同作業は楽しい時間となり、不幸な運命を背負った人たちの口元にも笑顔が戻った。「まだ大した収入にはなりませんが、仕事は私たちに生きる希望と喜びを与えてくれます。自分たちが誰かの役に立っていると感じられるのです」工房で働く職人の一人はそう語った。
経営者になったフインさんにとって、販売先探しはいつも頭を悩ませている問題だという。しかし、幸運にも彼のもとには、彼のことを気に掛ける大勢の友人が集まってくる。その中には、華やかなショービズで活躍する人たちもいる。2008年ミスベトナムのトゥイ・バンもその一人だ。
「私たちの作品は主に外国人向けの土産物屋などに、一つ約3万ドン(約145円)で卸しています。その他にも友人や様々なネットワークを通じて、世界中に輸出しています」フインさんは誇らしげに語る。一つ一つの竹とんぼは小さいが、それは実に大きなメッセージを運んでいる。フインさんたちの夢を乗せて。
[Nguyen Phuc Thanhnien 04/05/2014 03:15U]
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