VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

砂絵の魔術師チー・ドゥック、国内から称賛の嵐

2014/01/26 08:53 JST更新

(C)  laodong, チー・ドゥック氏
(C) laodong, チー・ドゥック氏
 アオザイに身を包んだ美女たちが参加した2012年のミスベトナム・コンテストの舞台。しかし、全国から集まった観客たちが最も魅了されたのは、39人の美女ではなく、レッドカーペットの上で絶え間なく動くサンドアートだった。観客を虜にしたのはサンドアーティスト、チー・ドゥック。ベトナムサンドアート界の巨匠だ。  ドゥック氏は、ホーチミン市の美術大学を卒業後、長い間、人形劇の仕事に携わっていた。彼が手掛けた奇抜な演出を見たある監督から音楽劇の仕事に誘われた。それ以降は、舞台上で火や煙を出したり、歌手に空中歩行をさせたり、という技術的な演出に力を入れた。  舞台の仕事はとても気に入っていたが、生活を安定させるために他の仕事もしなければならなくなり、そこで選んだのが挿絵作家の仕事だった。タインニエン出版社で10年近く働く中で一体どのぐらいの挿絵を書いたことだろう。昼間はそうやって会社員として働き、夜になると舞台で演出家として腕を振るった。そんな日々に満足していたが、一つのビデオクリップとの出会いが彼の人生を大きく変えてしまう。  それはハンガリーのサンドアーティスト、フェレンク・カーコのドキュメンタリーだった。この時、初めてサンドアートを知った彼はすっかり魅了されてしまった。何度も何度もビデオクリップを見ているうちに、自分でもやってみたいという気持ちになった。  材料も指導してくれる人もいない中、彼はインターネットで調べながら道具を自作した。初めは建設用の砂を使っていたが、ざらざらしていて両手が傷だらけになるため、海の砂に変えた。しかし今度は滑りすぎて、思うように描けない。試行錯誤の末、自分で使いやすい大きさに砕く方法に落ち着いた。  サンドアートを描くガラス板もまた悩みの種だった。鏡ではすぐに傷ができて、絵もぼんやりしてしまう。厚すぎると反射が強く、薄すぎると割れやすい。また、撮影用のカメラも問題だった。オートフォーカスのため明るくぼんやりした絵になってしまったり、ズームが不十分で絵の全体が映らなかったりした。買っては試しを繰り返し、8台目でようやく満足いく映像が撮れるようになった。

 しかし、最も大変だったのは、描く技法についてだったとドゥック氏は語る。「サンドアートは砂で絵を描くということに留まらず、砂を使って『表現』するものです。手のひらに砂を扱う感覚がないといけません。そっとガラスの上に砂を滑らせて思いどおりに描いたり、砂の量を適量に調節したり、毎日の練習が欠かせません」  練習を始めてから1年が過ぎた頃、ようやく成功と言えるものが完成した。そんな時、幸運にも、LED液晶画面を紹介するためのデモンストレーションの依頼が舞い込んだ。これが予想外の大反響を呼ぶことになる。  さらに、2010年初めには、あるミスコンテストの司会として招かれる。これは全く新しい大胆な試みで、サンドアーティストがプログラムをサンドアートによって導くというものだった。彼は各演目が終わるごとにサンドアートを披露し、観客の度肝を抜いた。この成功以降、彼は大きな芸術プログラムにも度々招かれるようになった。2012年のミスベトナム・コンテストもその一つだ。  「これほど大きなコンテストに招かれたのは初めてだったので、とても楽しみにしていました。コンテスト全体に私の絵が調和するように、入念に準備しました。おかげで評判は上々で、皆さんから賞賛の言葉をかけて頂きました」  既に多くの成功を収めた彼だが、さらなる目標があるという。「残念ながらサンドアートはまだ芸術として確固たる地位を築いているとは言えません。多くの人が単なる娯楽にすぎないと考えています。サンドアートが一つの芸術として認められ、美術学校でも科目に加えられるように力を尽くしていきたいと思います」 

[ Laodong 6:23, 13/12/2013U]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる