[特集]
鶏の羽で作る芸術、あるホイアンの芸術家の物語
2013/09/22 08:23 JST更新
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悠久の都、古都ホイアンの中でも最も静かな通りの片隅で、ある一人の作家が自らの世界をその独創的な手法で芸術にまで昇華させた。ひたすら取り組むこと30余年、貧しい作家の夢はいつか巨大な絵画を作ってギネスに挑戦することだ。
作家の名はディン・ゴック・ダット(本名ディン・トン)。芸術に生涯を捧げる彼は現在、市場の近くにある12平米程の借家で暮らしている。その小さな間取りの家には彼の作品が所狭しと飾られている。
私は一目見ただけで異世界に迷い込んだかのような錯覚に陥った。壁に掛けられているのはただの絵画ではない。目を凝らしてみれば、それが1枚1枚、鶏の羽を貼り合わせて作られた貼り絵だということが分かる。作品からは羽ならではの自然な色合いと不思議なぬくもりが感じられた。
現在の作風に到達するまでには幾多の汗と努力を要したという。原点は子供時代にある。幼いころからカラフルな鶏の羽が好きだった。離れ離れになる同級生への手向けの品として、鶏の羽で作った貼り絵を贈ったのが始まりだ。
以前はタピオカの粉を混ぜ合わせて糊付していたが、現在はそれに代わるものができたので、作品制作はだいぶ楽になったという。芸術は人生を美しくする、という持論を掲げる彼は、貧しい生活を続けながらも創作への情熱を冷ますことがない。部屋には幾つかの特別な作品も飾られている。彼は「これらの作品は観光客がいくら買いたいと言っても決して手放すことは出来ない」と語った。
その1枚が10年程前に作ったベトナムの国民的音楽家であるチン・コン・ソンの肖像画だ。「チン・コン・ソンは私のアイドルです。この作品は彼が30代の頃の写真をモデルに作りました」
独創的な手法で作品を生み出す彼だが、画法は全て独学だという。夢中になれることに出会い、それを突き詰めていったら現在のスタイルに辿り着いた。一つの作品を仕上げるのに必要な時間は2日ほど。しかし、気に入った鶏の羽が手に入らないときは手を休めて、創造のインスピレーションを掻き立てるものを探しに出かける。時には数か月をかけて一つの作品を完成させることもある。
同じ絵は二度と出来ない。彼の作品はどれ一つをとっても同じものはない。しかし、作品のテーマは一貫している。ホイアンの美しさ、人々の何気ない生活のワンシーンを描いたものが殆どだ。
「ホイアンの町を美しくするために少しでも貢献したいのです。この町の文化は静かで、それでいて奥が深い。だからこそ、価値の変わらない鶏の羽で作った作品が、この町の長い歴史を感じられるものになると思うのです」
[nhandan 25/06/2013 - 08:54 PM (GMT+7)U]
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