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[特集]

個人で養老院を立ち上げた女性「多くの母がいてくれて幸せ」

2013/08/18 07:44 JST更新

(C)Tien phong,Nguyen Thanh、ロイさん(左)
(C)Tien phong,Nguyen Thanh、ロイさん(左)
 南中部クアンナム省に、自分の家を売り払って養老院を立ち上げた女性がいる。チン・ティ・ロイさんにとって、ここで暮らしている16人の老女達は全て母親と同じだ。ロイさんは「16人の母がいてくれて、私は今が一番幸せ」と話す。  ロイさんは5歳の時に母を亡くし、その数年後に戦争で父も失った。叔母の家に引き取られ、貧しいながらも懸命に勉強して教員になった。同じく教員の夫と結婚して4人の子供にも恵まれた。子供達は皆成長して仕事を持ち、夫妻はタンビン郡ハラム町に2軒の家を持った。人もうらやむ幸福な人生だ。  しかしロイさんは2007年に定年退職すると「売家」の看板を掲げた。養老院の建設資金に充てるためだ。夫や子供達はロイさんの悲願を理解し、支持してくれたという。1年後、ヒエップドゥック郡タンアンに養老院が完成すると、ロイさんは引き取るべき孤独で経済的に恵まれない老人を探しに各地に出かけた。  対象者が見つかると、親戚や地元の当局者に会いに行って引き取る許可をもらった。人数は徐々に増え女性ばかり20人になったが、その後4人が亡くなったので今は16人だ。

 養老院の運営費として1か月当たり1500万ドン(約7万円)が必要になる。老人に支給される1人当たりの年金は60万ドン(約2800円)。それではとても足りないので、ロイさん夫妻は自分達の年金の余りや庭木販売事業の利益をつぎ込んでいる。養老院の経営は利益目的ではないかと陰口を叩かれたことから、資金は管理人にすべて渡し、地元の祖国戦線委員会に監査をお願いして透明性を担保している。  ロイさんは最近、椎間板ヘルニアの手術をしたばかりだ。手術が決まった時、16人の老女達はロイさんが歩けなくなるのではないかと心配し、全員涙した。手術は無事成功し、ロイさんは事前の見込みより早く体を動かせるようになった。ロイさんは「神様のおかげです。母達の面倒をみることができなくなってしまうかもと不安でした」と笑った。  最初に養老院に入ったニャムさんは、家族も親戚もなく一人で粗末な家に暮らしていた。現在92歳だが肌の色艶が良く元気だ。「あの子(ロイさん)のおかげで今まで生きてこれました」と歯のない口でうれしそうに語る。  老女達に自分の田舎に帰りたいかと尋ねると、全員が首を横に振った。「以前のように一人ぼっちではなく、話をできる友達がいて、世話してくれる人がいるここが幸せ。ゆったりと人生最後の時まで楽しく生きれればいい」。皆の思いは一つのようだ。 

[Tien phong online,14:00 | 12/08/2013,O]
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