[特集]
チン・コン・ソンの歌曲を愛する男性のオタク的人生
2013/07/21 08:28 JST更新
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ベトナムを代表するソングライターで2001年に惜しまれつつ亡くなったチン・コン・ソンの歌曲を、こよなく愛する男性がいる。メコンデルタ地方ドンタップ省カオライン市で暮らすチャン・バン・クアンさん(60歳)で、小さな部屋にはソン氏関連の記念品が飾られている。
言わばソン氏オタクのクアンさんが、ギターに夢中になったのは子供の頃。特に女性歌手カイン・リーが歌うソン氏の歌曲やギター独奏を聞いてから音楽が親友になった。知識人だった父親は西洋の芸術にも理解があり、クアンさんを応援してくれた。
小銭を少しずつ貯めて、初めてギターを手に入れたのは15歳の時。学校から帰ると、後は1日中カセットに録音した曲を聴いてギターと歌を練習した。
戦争の時代から現在に至るまで、お金に困ったことが何度もあったが、それでもギターだけは手放さなかった。いつしかギターの腕が上がり、歌声に心がこもるようになり、人から褒められるようになった。2008年になってユーチューブにギターを演奏する自分の映像を投稿したところ、多くの人から良好な反応があった。これまでに400本以上の映像を投稿しており、このうち半分以上がソン氏の歌曲だという。
反応は国内ばかりではなく外国からもある。韓国、日本、インドなどの若者らから、自分のギター演奏を評価して欲しいと頼まれ、英語でやり取りしている。「音楽は肌の色、民族、言葉の違いに関わらず、感情を共有できる素晴らしいものです」とクアンさん。
クアンさんはホーチミン市で生まれ育ったが、結婚後に妻の故郷であるドンタップ省に移った。かつては中部ダナン市で音楽カフェを手掛けたこともあったが、今はカオライン市の貸し部屋で一人で暮らしている。主な財産はギター4本とコンピューター1台だけ。奥さんのことを尋ねると、「自分はふらふらする人間なので、『愛する人は川の流れのように去ってしまった』」とソン氏の歌詞を引用して答えた。
現在のクアンさんの希望は、時代を超えた明るい音楽に人々の心を向けること。もちろんソン氏の歌曲は欠かせない。そのため自分の部屋でギター教室を開いており、生徒20人ほどに教えている。また、毎週火曜日の夜、カオライン市内のカフェでソン氏の歌曲を演奏している。毎年のソン氏の誕生日と命日には、ホーチミン市で行われるソン氏の追悼コンサートにも出演している。
クアンさんは最後に「人は誰も人生で借りを作ることを恐れるものですが、自分にとってソン氏の音楽に借りを作ったことは逆にとても喜ばしいことです」と語った。
[Lao dong online,28/06/2013 18:54,O]
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