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[特集]

農村に響くバイオリンの音色

2012/01/15 08:20 JST更新

(C) danviet
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 村の入り口にそびえる黄色の門、広がる水田、そこに見えるのは誰もが思い描くベトナムの農村風景だ。しかし、この村には見た目には分からない特徴がある。耳をすませてみよう、遠くからバイオリンの音色が聞こえてくる。この村は50年以上の歴史を持つ農民楽団があることで有名だ。村の名はテン村、東北部バクザン省にある小さな農村だ。  現在の団長グエン・コアン・コアさんは幼少よりバイオリンを始め、ベトナム戦争時には戦地に赴き演奏活動を行った経験がある。「ベートーベンが理解できるようになったのは、つい最近の事です」馬小屋の傍らでコアさんは語った。「収穫の忙しい時期になると、楽団の練習は休みになります。我々の本業はあくまで農業だからね」  テン村では、米の他、とうもろこし、トマト、花卉(かき)などを栽培しており、楽団の団員の多くが農業を営んでいる。楽団の練習は団員が忙しくない農閑期の週末に行っている。楽団は50年以上前に結成され、これまでに多くのバイオリン奏者を輩出してきたことで、ベトナムのクラシック音楽界では、名が知られた存在となった。団員たちはバクザン省各地の祭りで演奏するだけでなく、国内各地に演奏旅行に出掛けることもある。

 結成当時からの団員グエン・ヒエウ・ドゥアさんは1956年に、ある高名なバイオリン奏者が村を訪れた際、指導を受けたという。それまでは、農民たちは主にマンドリン、ギター、月琴などを演奏していた。初めて聴くバイオリンの音色に感動したドゥアさんは、稲や家畜を売って、憧れのバイオリンを手に入れた。今ではブラームスをそらで演奏できるという。ドゥアさんは、村役場に掛け合って、このバイオリン奏者を講師として、村に1年間招きいれた。こうして村には楽団が誕生し、後に多くの演奏者が生まれた。  コアさんは、団員として2年間の経験を積んだ後、軍に入隊し宣伝部隊に配属される。「当時の演奏会の事は、今でもはっきりと覚えています。村の者たちは、軍のさまざまな部隊に配属されて、演奏会で偶然顔を合わせることもありました。今でもテレビ局などが戦時中の演奏を隠れた名演として放送する事がありますが、私はあまり良い事とは思いません。当時の演奏はプロパガンダのために軍が利用したものでした。」  団員たちがバイオリンに時間を費やせる時間は限られている。本業の畑仕事が忙しいためだ。しかし、年を重ねても、どんなに忙しくても、演奏への情熱が冷める事はないという。「平和になった今では楽しみと芸術のために演奏ができます。ただ我々はあくまで農民であるという事を忘れたことはありません」コアさんはそう繰り返した。それでもこの村には確かに音楽が息づいている。耳をすませてみよう。テン村は今もバイオリンの音色で溢れている。 

[Bao Ngoc ictnews 18/11/2011 - 17:24 U]
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