[特集]
恵まれない子供たちの民間施設「幸福の家」
2011/04/03 08:42 JST更新
(C) Lao dong, Son Lam |
東北部バクザン省バクザン市トスオン地区には、フランス植民地時代にフランス軍が戦争用に酸を生産していた「酸の丘」と呼ばれる場所がある。恐ろしげな名前を持つこの丘だが、今では松林や立派な家が立ち並び、頂上付近には恵まれない子供たち30人が共に暮らす「幸福の家」として知られているティエンフック人道センターがある。
センターといっても公立の施設ではなく、2人の子供を持つ母親グエン・ティ・ソンさんが切り盛りしている民間の施設だ。2棟の建物から成るこのセンターが設立されたのは1年前と最近だが、ソンさんは数十年以上前から恵まれない子供たちを引き取って育ててきた。
ソンさんが今でも心残りに感じているのは、フーという名前の男の子のことだ。彼女が23歳の時、精神を患った母親と小さな子供が家の門の前で倒れているのを発見し、母子とも家でしばらく預かることにした。3年後に親戚が現れ母親を引き取ったが、フーはそのままソンさんが育てることになった。しかしその後、実の叔父がフーを金(きん)採掘業者に売り飛ばす事件が起きた。ソンさんは夫と共に各地を探し回ったが、ついにフーの消息はつかめなかったという。
今センターでは、枯葉剤(エージェント・オレンジ)の影響を受けた父親を持つ言語障害の双子の姉妹、3歳のとき大人の不注意で熱い油を浴び障害を持ってしまった子供、親の都合で置き去りにされた子供など、それぞれの事情を抱えた子供たちが暮らしている。
なぜそこまで人に優しくできるのかとの問いに、ソンさんは「両親の影響でしょう」と笑って答えた。ソンさんの父親は医師で、貧しい人からは治療費を受け取らなかったという。母親は80歳を過ぎているが今も元気で、地元の人々に竹工芸を無料で教えている。「私にとっては、困難な状況にある子供たちを育てることこそが何よりの喜びです」とソンさん。
30人の子供を育てることは、彼らが健康であっても大変だが、センターの子供たちは身体や精神に障害を持っていたり、病気を抱えていたりする子が多い。重病にかかった子供の入院費を工面するために、大切な財産を売ったこともあった。しかしソンさんはそんなことにめげるどころか、かえって決意を新たにするという。
センターでは、子供たちに職を身につけさせ、運営費の足しにするため、地元の農民協会や篤志家の支援を受けてミシン20台を導入した。子供たちが作った買い物袋の販路も目処がついている。
ソンさんは、今日のがんばりは必ず報われると考えている。病気で寝込んだ時、子供たちが心配して世話をしてくれると、とても幸せを感じる。ソンさんに育てられ、今では一人立ちしたかつての子供たちも、ソンさんへの感謝の気持ちを忘れていない。24歳のトゥンさんは、右腕の半分がない。「お母さん(ソンさん)のもとで暮らすようになってから、人生の意義や喜びを感じるようになりました。助けてくれた恩に報いたいと思っています」と語った。
[Lao dong online, 16.3.2011 | 08:19 (GMT + 7), O]
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