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[特集]

献体登録40人以上の一家「墓なんかいらない」

2011/03/20 08:37 JST更新

(C) Sai Gon Tiep Thi, Thanh Nha
(C) Sai Gon Tiep Thi, Thanh Nha
 親が亡くなったとき立派な墓をつくるのは子の務め――。常識的にはそう考えられている。しかしメコンデルタ地方ドンタップ省カオライン市に住むズオン・バン・タイさんの家族や親戚は、タイさんの父親の例にならって40人以上が献体登録をしている。  タイさんの父ズオン・トゥ・ティンさんは2007年12月に亡くなった。生前のティンさんは80歳を超えても毎朝新聞を読み、インターネットでもニュースをチェックし、ときどき自転車で出かける日々を過ごしていたという。  ティンさんはある時、自分は医学のために献体する考えがあるが、どう手続きすればよいかわからないから書類を取り寄せるようにと家族に話した。献体などという話は聞いたこともなく冗談だろうと思ったがとりあえず書類を取り寄せると、ティンさんはさっそく書類に署名し、地元の人民委員会に提出した。  人民委は地元で初めての手続きに躊躇し、すぐに受け付けようとしなかった。ティンさんはそれでもあきらめず、何度も役所に出向いて書類を受理するよう求めた。「父は自分の頭がおかしくないことを証明するためなら精神鑑定を受けてもいいと話していました。最終的に役所が書類を受理してくれたことをとても喜んでいました」とタイさん。

 長女のザンさんは「おそらくニュースを通じて、医学の教育と研究のために必要な遺体が不足していることを知ったのでしょう。父は普段から、もし良く生きたければ死んだ時にも社会に貢献できることがあればそうするべきだと話していました。父は節約家でしたが、村の貧しい家の子供たちや学校に教科書や自転車を寄付していました」と振り返った。  その後ティンさんは冠状動脈血栓で倒れ、もし死んだらホーチミン市医科薬科大学に忘れずに連絡し献体するよう言い残して亡くなった。タイさんは「亡くなったら墓をつくることが親孝行だと思っていましたが、父の遺言に従うことこそ子の務めだと考え直しました」と話した。  父の葬儀が終わってしばらくすると、今度は母が自分も献体したいと言い出した。タイさんは母の言う通りにした。やがてタイさんの兄弟たちや親戚、友人や同僚たちまで、献体登録をするようになった。ザンさんは「父が皆の心に種を蒔いたのです。父を誇りに思うのなら、自分もそれにならうべきですから」と語った。  タイさんは最後にこう語った。「報道を通じて、献体登録者が1万5000人近くに上っていることを知りうれしく思っています。父は『多くの人のためになることをする人は、決して孤独ではない』という言葉を残しました。私もそう信じています」  

[Sai Gon tiep thi online, 18.03.2011 7:42 GMT+7, O]
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