[特集]
越僑青年、ストリートチルドレンの「大家族」作る
2011/03/06 08:38 JST更新
(C) Tien phong, Nadine Albac |
ベトナムで初めての社会福祉法人「KOTO(Know one, Teach one)」は、ストリートチルドレンや経済状況が困難な子供たちのために、ホテルやレストランで働く技能を身につけさせる職業訓練センターを運営している。KOTOが重要視しているのは、技能と共に子供たちに自信と独立心を持たせることだ。
KOTOを設立したのは、オーストラリア越僑(在外ベトナム人)のジミー・ファム(39歳)。1972年に当時のサイゴンで生まれ、米軍が去った後に家族と共に国を出た。シンガポールの難民キャンプからサウジアラビアでの暮らしを経て、最後はオーストラリアにたどり着いた。「ベトナムを出たのは2歳の時で、当時のことは何も覚えていない。ずっと自分の出自が恥ずかしくて、オーストラリア人になりたいと思っていた」という。
オーストラリアの旅行会社で働いていた時、ホーチミン市のホテルを視察に出張する機会が得られた。その時ココナツを売るストリートチルドレンのグループに出会い、その生活を知ってショックを受け食事や衣服を買い与えた。その後ベトナムで仕事をするようになり、行く先々でストリートチルドレンの姿を見かけた彼は「子供たちが将来に希望を持てるような何かをしたい」と感じた。
ジミーは1996年にKOTOを設立、1999年にハノイ駅近くでバインミー(ベトナム式サンドイッチ)の店を出した。営業許可も人脈も資金もないうえ、独身の若い男が子供たちと働くことに良からぬ憶測をされたこともあったという。「子供たちが自分のやる気の元だった。彼らに信頼してもらうことが最も重要だった」。1年後にハノイの有名観光地「文廟(孔子廟)」近くにレストランを開いた。やがてビル・クリントン元米大統領も立ち寄る店になった。
ジミーの母親も、かつてストリートチルドレンだったことがあるという。「母はひどい貧困の中を生きてきた。そのことは私が今の仕事を始める動機になっている。人は自分で運命を選ぶことはできず、運命の方が人を選ぶものだ」。彼は、ベトナムでストリートチルドレンを助けることは運命だったと思っている。
KOTOでは現在16~22歳の50人の生徒が学んでいる。KOTOに入る前には2~3か月かけて家族の状況や適正を調べる。KOTOに入ると2年間かけて36科目を学習する。1年目は主に学科を、2年目は実習を学ぶ。ジミーは「すべてのストリートチルドレンを助けることができないことは承知している。しかし助けることのできる子供たちには最善を尽くしたい」と話す。
KOTOの女子生徒グエン・ティ・トゥイ(18歳)は、あと4か月で卒業を迎える。卒業後はベトナムのホテルで、将来はオーストラリアのホテルで働きたいと話す。彼女の妹が大学に入学するのを助けるためだという。トゥイは「KOTOでは多くの兄弟たちのいる大家族を持つことができた。でも一番大切なのは、自分の将来に希望が持てたこと」と語った。(敬称略)
[Tien phong online, 15:58 | 17/02/2011, O]
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