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[特集]

娘殺しの犯人の死刑免除を嘆願

2008/06/22 08:27 JST更新

 その70歳過ぎの白髪の男性は、被害者側の証人として法廷の証言台に歩み寄った。首をうなだれている被告に目をやり、しばらく沈黙してから静かな声で話し始めた。「娘が殺された日、私は娘の体に抱きすがる以外、何もすることができませんでした」。法廷内は静まり返った。怒りに満ちた被害者の父親の声に、被告人グエン・テー・ナン(29歳・男)はじっと耐えているようにみえた。深いため息の後、老人はさらに続けた。「今日私がここに来たのは、死刑の免除をお願いするためです。これ以上わが子を亡くして悲しみに暮れる親を増やすようなことはしたくありません」。被告の家族や友人の座る席から、安どのため息が漏れた。  今年3月20日、ホーチミン市人民裁判所は、ナン被告に殺人罪で死刑を言いわたした。被告の母親は一人息子の死刑判決に言葉を失い、友人たちも彼のために涙を流した。控訴審にかけられるまでの15日間、彼らは被告の刑が軽くなるよう奔走した。控訴審でナン被告は自分の行為について多くを弁明せず、被害者の家族への謝罪と奔走してくれた人たちへの感謝の言葉を述べ、死刑になった場合は自分の体を献体してほしいと話した。友人らはそれを聞いて涙した。  ホーチミン市美術大学の学生だったナンは、才能に恵まれているうえ努力家で、卒業とともに民間の映画会社に就職した。順風満帆のようにみえた。しかし彼は恋愛においては人一倍執着心が強かった。大学で2年後輩の女性Hさんと出会い恋に落ちた。彼女は彼のことを友だちとしか思っていなかったが、彼は希望を持ち続けた。ある時、仲間の結婚式の帰りに彼女を家へ送った際、ナンは彼女の新しい恋人を紹介された。次の日3人は彼女の部屋で、ナンとのお別れのパーティーをした。ナンは「彼女と最後の話があるので先に帰ってほしい」と相手の男性に伝え、そして悲劇が起こった。  「娘を殺されたことを思えば、被告を決して許すことはできません。娘は死んだのです。どれだけ賠償金を積まれようが、娘は生き返りません。一度被告の母親が電話をかけてきてこう言いました。『息子が死刑になるのを黙ってみていられる母親はいません。もしそうなるのなら、私が先に死んだほうがましです』。それを聞いて心を決めました。自分の感情に反することだし、家族の反対もあってずいぶん悩みましたが・・・」。  被害者の父親は法廷に出席するために、メコンデルタ地方キエンザン省を午前3時に出発してバイクで来たという。書面で済ませることもできたのではと伝えると、彼は首を横に振った。「直接ここに来て、はっきり自分の口から伝えないといけないと思ったのです。裁判官が私の思いを理解してくれるように。被告が罪を悔やんで、社会のために生きるようになることを願っています」  控訴審判決は、死刑から終身刑に減刑になった。判決を聞くと老人は急ぐようにバイク駐輪場に向かった。  

[Nguoi Lao Dong onlinh, 02-06-2008 22:16:01 GMT +7]
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