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ベトナムにおける携帯通信市場は郵政通信省が管理する郵政通信総公社(VNPT)が展開するビナフォン(Vinaphong)とモビフォン(MobiFone)の2社が市場シェアの85%という圧倒的シェアを維持している。この2社は認可権を持った官庁お抱えの通信会社だということもあり、郵政通信省ではこれまでこの牙城を崩されかねない他社の参入を認めてこなかった。 しかし、度重なる独占事業への批判から、郵政通信省は2004年、国防省系のベトテル(Viettel)に対し新たに通信事業への参入を認め、ベトテルはこれまでに契約数60万件を獲得している。最近では数々のプロモーションを実施し、1ヶ月単位の新規加入契約者数ではここ数ヶ月トップを走っている。しかし、順調に見えるベトテルの発展も、水面下では郵政通信省がドル箱である通信事業の既得権を保持するためさまざまな嫌がらせを行なってきた。 特に、ベトテルからビナ・モビフォンに通話する際の接続容量が制限されているため、ベトテル→ビナ・モビフォン、言い換えれば、国防省→郵政通信省にかける場合50%の確立でつながらないというものである。当然、郵政通信省→国防省へかける場合は100%通話が保証されている。 国防省のグエン・バン・ジィン次官は25日、ベトテルからビナ・モビフォンに接続する場合の接続容量増強をVNPTが認めないことを訴える公文書を首相に送付し、VNPTに是正勧告を促すよう求めている。これは今年に入り8度に渡りベトテル側がVNPTに対し接続容量の増強を求めてきたが、設備不足を理由にいまだに実現していないことによるものである。 実際には接続容量増強のための設備投資はVNPT年間予算のわずか0.3%にあたる200万米ドルの投資で実現できるのだが、VNPTはこれ以上市場シェアを狭められたくないために、故意に接続を拒んでいるというのが事実のようだ。この他、ベトテルがVNPT側に支払っている接続量は年間3,000万米ドルに上っており、わずか200万米ドルの設備投資ができないわけがない。 現在市場シェア9%のベトテルの利用者が、85%のシェアを占めるビナ・モビフォン側に通話する場合、接続容量不足により接続率が50%以下まで落ち込んでいる。今後利用者数をさらに積み増してゆくと、接続率はさらに下がる計算になり、利用者に不便をもたらし、さらには事業自体が傾きかねない。 ベトテルによると、通信業を一手に握るVNTPはこれまで5年間に渡り通信業に関わるあらゆる新規参入組みに対し、同様の嫌がらせをしてきたとしている。加入者数で第4位のエス・フォン(S-Fone)参入時にも同様の嫌がらせで認可が下りず、いまだ契約件数が35万件と低迷している。ベトテルは新規参入時に通信インフラ整備などで約2兆ドン(約1億2,570万米ドル)を投じているが、このまま圧倒的シェアを占めるビナ・モビフォンとの相互通話が制限されれば契約件数が伸び悩み採算が取れず、破産の危機もはらんでいる。 今後WTO加盟などにあたり、独占業界に対する開放圧力が強まる中、既に莫大な資金と権力を持ってしまった郵政通信省へのメスをどう入れるか。この訴えに対する今後の政府の動きに注目が集まる。
[VIETJO ベトナムニュース、参考:Nguoi Lao Dong, Thanh Nien]
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