(C) vnexpress |
1便目の移動には5分もかからず、6人を救出することができた。2人はすぐにまた川に出て、川の流れにもまれている人々の手をつかんだ。同時に、他の3~4隻のボートも駆け付け、地点を分担して救助にあたった。
4便目、センさんは、泳げない2人がまだカンボジア側の川岸に近い水の中にいるのを見つけた。うち1人のもとには別のボートが助けに行く最中だったため、もう1人の黄色いシャツを着た青年のもとへフンさんの操縦で向かった。そして、今にも沈みそうになっている青年のシャツの首元をやっとのことでつかんだ。ボートに引き上げた青年は、まだ息をしていたが顔は紫色で、白目を剥いていた。
その日、フンさんのいかだから100mほど離れたところに住んでいるトゥー・ドゥックさん(男性・52歳)も、ボートを出して3人を救助した。助けを求める叫び声を聞くやいなや、ドゥックさんは国境警備隊の駐屯地に走り、それからボートに飛び乗った。水の流れは速かったが、長年の経験ですぐに助けを求める人たちのもとへたどり着いた。「誰だって同胞が危機に瀕していたら助けるでしょう」とドゥックさんは語る。
ビンジー川を挟んでカジノの向かいの家に住んでいるグエン・ティ・ビック・トゥエンさん(女性)によると、カジノから人が脱走するのはこれが初めてではないという。テト(旧正月)以降、30人近くがカジノから脱走して川を泳いで渡ったというが、これまでは1回に2~3人程度だった。2か月ほど前には男性4人と女性1人の計5人が夜9時ごろに川を泳いで逃げてきたが、そのときも地元住民のボートが救助したのだという。