(C) vnexpress |
アンさんはまた、新型コロナで父親を亡くしたという青年からも依頼を受けた。依頼を受けた翌日、同じ青年から「もう1枚お願いできますか?」と連絡があった。アンさんが受信したデータを開くと、前日に依頼を受けたのとは別の人の写真だった。「父方の祖母も亡くなったんです」と青年は付け加えた。
他にも多くの人が短期間のうちに2人、時には3人の故人の写真データをアンさんに送った。「私が依頼を受けた写真のおよそ20%が30歳未満でした。写真が次々と送られてくる中、私は生死の境がいかに薄弱なものなのか実感しました。もはやお金は何の意味もなく、普通に息をしている、それだけで幸せなことなんです」とアンさんは語る。
アンさんは新型コロナの影響で4か月近くも会社を休業しているが、このことに気付けた自分は幸運だと感じている。
アンさんのモチベーションとなっているのは、多くの依頼人が故人のために遺影を飾って祭壇を整えることができて心の痛みが和らいだと打ち明けてくれることだ。一方、アンさんの行動もまた、遺族にとって悲しみを乗り越え、さらに他の人たちの役に立ちたいというモチベーションになっている。
アンさんに母親の遺影を作成してもらったティエンさんは、諸々の手続きを終えた後、仮設病院に入院する感染者のケアをするボランティアに登録した。「母が亡くなったとき、たくさんの人たちが助けてくれました。だから今度は私が助ける番です。新型コロナによって悲しみに耐えなければならない人がこれ以上増えないことを願っています」とティエンさん。
アンさんにとって今の一番の願いは、依頼人がゼロになることだ。「最近は一時期に比べて依頼人が減ってきました。これは、新型コロナが徐々に収束に向かっているという前向きな兆候だと思っています」とアンさんは語った。