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しかし、ホーチミン市の感染状況が深刻化し、多くの人々が命を落としている現状を目の当たりにしたアンさんは、すぐに行動しなければと考えた。アンさんはSNSのグループに告知を投稿するにあたり、事前にグループの管理人にメッセージを送り、理解を求めた。いざ投稿してみると、驚いたことに多くの人たちから支持され、投稿も広くシェアされていった。
アンさんの当初の計画は、遺族から故人の写真データを受け取って修整を加え、印刷して自宅に届けるというものだった。しかしながら、厳しい社会的隔離措置の真っ最中だったホーチミン市ではかなり骨の折れる仕事で、印刷屋が見つかっても配達員が見つからないという状況だった。
最終的に、アンさんは受け取った写真データを修整し、データを遺族に送り返すだけにした。印刷屋が見つからないという遺族には、携帯電話に遺影のデータを保存して、線香を手向けるたびに画面に遺影を表示させることを提案した。
最初の1週間で30~40人から故人の写真のデータを受け取った。そのほとんどが古いIDカードの証明写真の部分を撮影したもので、ぼやけてしまっているケースも多かった。多くの依頼人は、故人の鮮明な写真が見つからなかったり、元気だったにもかかわらず突然亡くなってしまったため遺影の準備などしていなかったりと事情があった。
鮮明な写真であれば15分もかからずに修整できるが、画質の低い写真の場合は肌や髪の毛の色の修整から「衣服の着せ替え」まで、半日かかってしまう。午前2時までパソコンの前に座って作業する日も多々あった。
アンさんが受け取った依頼メッセージの中で忘れられないのが、段ボールに貼り付けられた3×4cmの写真で、女性の氏名、生年月日、死亡年月日が書かれていた。
メッセージを送ったグエン・ティ・ホアさん(女性・33歳)によると、故人は義理の姉だという。「義姉は妊娠23週目でしたが、新型コロナで母子ともに亡くなってしまいました。残された兄は男手1つで幼い子供2人を育てています」とホアさんは教えてくれた。