(C) vnexpress, Tien Hung, バウさん(右)と夫のヤンさん(左) |
中国に連れて行かれて10日近く経ってから、1人の中国人青年が2000人民元を支払い、バウさんを妻として連れて帰った。その青年の名はヤン・チャンフェンといい、当時バウさんよりもひと回り年下の19歳だった。
ヤンさんはバウさんをバイクに乗せて、広西省北流市にある自宅に連れて帰った。ヤンさんの家は人里離れた貧しい地域にあり、そこに着くまでに半日かかった。「私を売った人は、もし妻になることを拒めば叩かれる、と言いました。実家も家族も恋しかったですが、耐えるしかありませんでした」とバウさん。
ヤンさんの家はとても貧しく、小さい頃から両親もいなかったため、3人兄弟で互いに庇い合いながら育った。貧しい上に仕事もなかったためヤンさんに恋人はできず、妻を買うためにお金を捻出した。妻を連れて帰った翌々日、ヤンさんの家族は結婚式の代わりにお祝いの食事の席を設けた。
「言葉がわからなかったので、初めの頃私たち夫婦はジェスチャーでコミュニケーションを取っていましたが、なんとなく理解できていました。半年くらい経つと少しずつ中国語がわかるようになり、話せるようになったので、生活は少し楽になりました」。
バウさんいわく、中国に妻として売られた女性の中でも、夫に可愛がってもらえたバウさんは幸運なケースだという。売買で結婚することになった2人だが、短い期間のうちに愛情が生まれ、互いに愛し合うようになった。数年後には2人の男の子にも恵まれ、バウさんもリー・トゥーという名前で中国籍を取得した。
「ヤンは私をとても愛してくれて、私は中国に売られた他のベトナム人妻のように叩かれたり罵倒されたりすることは一度もありませんでした。ヤンはとても穏やかで、私が叱ることの方が多いくらいです」とバウさんは笑いながら言い、隣の若い夫を抱きしめた。
中国ではたくさんのベトナム人女性が妻として売られ、虐待に耐えかねて逃亡している。初めの頃、バウさんも逃げたかったというが、ヤンを愛するようになり、2人の子供が生まれると、ベトナムにもう1つ家族がいることを忘れてしまうことすらあった。
「もちろん故郷も子供も母も恋しかったですが、ヤンの家族の状況も苦しく、またヤンとの間に生まれた子供2人も育てなければいけなかったので、帰国は先延ばしにするしかありませんでした。その後、夫の家族にも余裕ができて、夫婦だけの家を持つようになり、子供たちも自立したので、ようやく夫婦でベトナムに帰ることを考えられるようになりました」と、バウさんはこの22年間一度も連絡できなかったことを家族に説明した。