(C) nhandan, グエン・リー・フオン |
「1曲目は印象派のドビュッシーの曲でした。私はこの曲で審査員に良い印象を残すことが出来たようです。2曲目は他の印象派の作曲家によるソナタでしたが、奥行きのある演奏だと評価してもらえました。ステージ上で一番大事なのは平常心。不安や恐れは音に表れます。全ての曲を演奏し終えると、すごくほっとして、出来る限りのことはやったと思いました」
―そして、グランプリを獲得されたわけですね。
「自分がグランプリを獲れるとは夢にも思いませんでした。いざ受賞する時になっても半信半疑。通訳の男性から「あなたが1位ですよ。さあ、壇上に登らないと」と言われて、「本当に私?」と聞き返してしまいました。ベトナムから来た無名の学生がグランプリを取ったことに、その場にいた全員が虚を突かれた様子で呆然としていました」
―課題曲の中には中国の曲が2曲ありました。中国の曲で中国人演奏家を上回ることは、難しいことのように思いますが。
「ベトナムにいた頃、その曲は音楽理論を学ぶための曲という認識でした。先生方は机上でこの曲を分析し解説してはくれますが、実演はしてくれません。作曲家の意図を知りたいと思って、音源を探しても見つかりませんでした。コンクールの最中に、私は中国人演奏家たちの演奏を聞いて、曲のイメージを膨らませていきました」