メルボルンで最近、多くのベトナム語教室が出現している。親たちは、学校でのベトナム語の授業は必須だと言い、ベトナム語学校の校長たちも学生が自国の文化への理解を深めることに役立つと語っている。
このベトナム語クラスは、学生のみならず親や教員たちにも好評だ。学生たちにとっては週末ごとに友達と会うことができるし、母国語で過ごせることが魅力のよう。他の教科と違って楽しんで授業に参加するので、試験も楽にパスできる。親たちにとっては、子どもがベトナム語を話せるようになるのがうれしい。故郷を長く離れて生活している家庭においては、母国語での会話が困難になっていることが多いからだ。教員にとっては、授業の中で自国の心や誇りを教えることができることが何よりの喜びのようだ。あるコミュニティの言語を維持することは多文化社会形成にも大いに寄与するということで、州の教育委員会も好意的に見ている。
最も大きなラック・ホン・ベトナム語校では、週末に116のクラスで2600人もの生徒が学ぶ。1983年創立のスプリング・ヴェール校では12段階のクラスを持ち、学生の数は1300人に上る。ベトナム語クラスは週末に行われ、日曜日には午前の部と午後の部の2クラスを開いているところが多い。ベトナム人が多い地域の学校などを借りて行われ、週末だけのクラスといっても運営はかなりきちんとしている。
ベトナムで教職を勉強した後移住した人、オーストラリアで教職を学んだ人など、教える教員たちの経歴はさまざま。オーストラリア政府が求める教員の条件は、公式教育機関において最低60時間の専門コースを受講することだ。教材としては現在ラック・ホン校の校長をしているタイ・バック氏の教本が人気だ。教員たちはさらに、各自で用意した資料をプラスして授業を行っている。また、スプリング・ヴェール校のように、アメリカやカナダで出版された教本を使用しているところもある。
しかし課題や疑問はまだまだ山積みだ。どうしてもオーストラリアで暮らすベトナム人は、英語を上手に話し、アングロサクソンの生活様式に合わせることを求められる。州政府が移民を奨励する一方で、ベトナム人は移住しても母国の言語を守り通そうとする。これは矛盾といえないだろうか?
ベトナム語を効率よく学習できるように、正式な学習要領が必要ではないだろうか?また使われている資料は1975年以前のサイゴン時代のものがほとんどという状況で、現代の社会において他国の人との交流に対応することが出来るのだろうか?このように一見順風に見えるベトナム語教室も実は試行錯誤の連続だ。
ヴィクトリア州の各ベトナム語校はこうした課題に応えるべく、教員同士の交流の場を設けたり、学習資料を援助したり、教員たちの研修プログラムを実施したりと奮闘し、同胞の母国語教育に情熱を注いでいる。