ホーチミン市フーニュアン区に住むある家族は、ある晩のこと、深夜家の鍵を壊して進入した泥棒に、鉄金庫(セイフティーボックス)を開けられ、金庫に入れておいた現金一切合財と、2台の新車バイクを盗まれた。家人がぐっすり寝ているのを見計らい、冷蔵庫あったアメリカ産ブドウまで食べて泥棒は悠々引き上げた様子で、家人が朝起きてみると、ブトウの皮と種がきちんとテーブルに置いてあったという。このように、家の鍵を壊して侵入した泥棒が、鉄金庫の中の貴重品を盗むケースは後を絶たない。
ホーチミン市では、色々な種類の金庫が販売されており、外見や性能は様々だ。金庫街といえば、市内3区のヴォー・ヴァン・タン通り(Vo Van Tan)。ベトナム製から韓国製・中国製の輸入品まであり、耐久性、耐火性に優れたものなど、泥棒対策のために作られたような金庫が多種多様に陳列されている。しかし、これらの金庫の品質は眉唾物だ。
金庫街の店主たちは口をそろえて、「昔から今まで一度だって、ここで売っている金庫を壊されたという話は聞いたことがありませんよ」という。それでは、もし金庫の暗証番号を忘れたときはどうするのかと聞いてみると、おなじ店主が「ご来店いただければ、開錠専門スタッフが、1回30万ドン(約2160円)ですぐ開けて差し上げます」と答える。移動させると、警報が鳴る金庫、電子暗証番号の金庫など、店主はたくさんの金庫を紹介してくれるが、試しに金庫に鍵を掛けて、強く踏んでみたりしたところ、一向に警報が鳴る気配がない。店主のセールストークを鵜呑みにしてはいけないのである。
公安の社会秩序維持班のある幹部によると、「泥棒は重い方の金庫を盗んでいくだろう」と考える人が多く、現金や貴金属用には小さい金庫を購入して、適当な場所に置いてしまうケースが少なくないと言う。テト前のこの季節は、気候もよく、浮かれる時期である。宴会に出かけて、ほろ酔い加減で帰宅する機会も多くなるであろう。泥棒は、住人の出かける予定をしっかり調査済みで、住人がいい気分で深い眠りについた頃、無用心に掛けられた鍵を開けて侵入してくる。朝起きたときには、もう手遅れで、泥棒はすでに遠くに逃げてしまっているだろう。そうならないために、金庫の見かけの万能性に頼らず、家の鍵を何重にもかけ、用心深く戸締りをして、警戒することが重要である。