「日本のベトナム料理店王」と呼ばれるのはフードワークス社の宮本圭一代表取締役社長だ。宮本さんは現、東京とその近隣県で30店舗のベトナム料理店を経営している。今年6月までにさらに20店舗をオープンさせる予定だ。そんな宮本さんもベトナム料理店オープン当初は苦労されたようだ。
日本でベトナムブームが起こった4年前、ベトナム料理屋は日本に数件ほどしかなく、大手スーパーにもベトナムから輸入された加工食品は売られていたが、それほど量は多くなかった。しかし、旅行中に食べたフォーやブンボーをまた食べたいという人は多く、そんな時代の趨勢を見て、宮本さんは東京の都心にベトナム料理店をオープンさせることを決意した。「ベトナムは食材も店を彩る装飾品も安くて豊富です。このことも私にベトナム料理店をなるべく早くオープンさせようと駆り立てた理由のひとつです。」と、宮本さんは語る。
しかし当初は、店があまり知られていなかったことや味が本物の「ベトナム料理」の域に達していなかったので、客足はあまり良くなかった。そこで宮本さんは一大決心をしてベトナムに渡り、味にうるさい日本人の舌を満足させるような食材、料理人を探し出した。さらにはアルバイトでベトナム人留学生を雇い、誠心誠意をもって接客に当たらせた。効果は絶大で、順調に店舗を増やし、現在は30店舗まで拡大。ベトナム人従業員も300人を抱え、2005年の売上高は3500万米ドル(約40億6000万円)にまで達した。
宮本さんはベトナム人に日本独特の料理を紹介しようと鉄板焼きの店「花蝶」(ホーチミン市1区、ゴ・ヴァン・ナム通り)を今年12月にオープンさせた。日本で成功したベトナム料理店展開のコンセプトを活かし、すべてを日本風にしてお客に日本の空間を鑑賞してもらうことに注力した。宮本さんはさらにベトナム食材の加工工場にも投資する予定で、投資規模は200−300万米ドル(約2億3200万−3億4800万円)になる予定だ。ここで加工された食材は日本にある彼のベトナム料理店チェーンに供給することを目的としている。
宮本さんは、「私はベトナムが大好きです。大好きだからこそ今まで成功することができました。これからの食材加工への投資も日本の市場のものよりもベトナムの農産物、海産物は数十倍も安いのできっと成功することでしょう。」と抱負を語った。