ホーチミン市では今年下半期だけで5台の最新モデルの高級車が盗まれるなど、車の盗難が相次いでいる。盗まれた車は一度国外へ出され、輸入車として車両登録書類を得たのち、さらに国内へ買い戻されることが多い。また、車両登録書類の無い車の売買も国内で一般的だ。バイクは盗まれやすいことで有名だが、四輪車の盗まれやすさもバイクと変わりはしない。
12月半ば、同市公安は、車の元の所有者が車を盗難し転売するという、想像を絶する盗難事件を検挙した。この事件の被害者は同市タンビン区在住のサンさん。彼は9月30日に家族と市内コンホアのマキシマーク(スーパー)に買い物に出かけ、店の前に駐車していたマツダ製の高級車を盗まれた。公安が全国各地や国境解放地点を捜索した結果、盗難車はニントゥアン省で発見された。発見時、盗難車はBさんが保有しており、不思議なことBさんは正式な車両登録書類を所持、名義変更や車両登録税を納入の準備も万端だった。
この事件の容疑者として検挙されたのは、市内タンビン区内の有限会社社長,グエン•ヴァン•ティー容疑者。盗まれたマツダ車は元々ティー容疑者が所有していたものだった。ティー容疑者は8月、この車を知人のKさんから購入、時価の3分の1程の手付金を支払った。Kさんは車を銀行のローンで購入しており、ローンの返済が済んでいなかったため、車両登録書類一式は銀行が保管、ティー容疑者には書類が渡らなかった。購入1ヶ月後、ティー容疑者は書類の無いまま、サンさんへ車を転売、その後9月30日にマキシマーク前で「自分の」車を発見したティー容疑者は、コピーキーでドアを開け、簡単に盗難に成功した。翌日、ティー容疑者はニントゥアン省のBさんに車を売りつけ、急いでホーチミン市に引き返し、Kさんに残額を納めるとともに、銀行にある車の書類の引渡しをKさんに請求、書類を手にするとニントゥアン省に戻り、書類をBさんへと渡した。
以上のケースは屋外での盗難ケースだが、家族で夕食を食べに行っている間に家に駐車していたBMW製の車と現金2000万ドン(約 14万8千円)、さらにVCDプレイヤーが盗まれた事例や、同じく家の中で厳重に管理していたトヨタ製のレクサス一晩のうちになくなってしまったという事例など、敷地内に駐車していても盗難されるケースは多い。多く四輪の車両盗難事件は、犯行の手際があまりに巧妙なため、公安も捜査にはお手上げ。一方、被害者側の反応も様々で、自動車保険に加入している場合、保険金で新車を入手できるからといって捜査に協力せず、盗難確認書の発行のみを求める被害者も存在する。