今年9ヶ月間に海外旅行に出かけたベトナム人はのべ7万人、一頃の海外ツアーブームで富裕層のほとんどが既に1,2回の海外旅行を経験し飽和状態となっているため、これまでちょっと手が出なかった上位中間層を取り込もうと各社値下げ競争の模様を呈している。そしてその効果が現れたのか今年これまでの海外旅行者は昨年比30%増になっているという。
しかし、このような状況とは裏腹にツアーの質に関して最近利用客からのクレームが相次いでいる。ホーチミン第1区に住むThanh Hongさんは2人の子供と一緒に3人で6泊7日マレーシア・シンガポールツアー(1人380米ドル、空港税、税金別)に参加したが、その楽しい雰囲気は飛行機の最後部に案内されたときから何かがおかしいと思い始めたと話す。
ツアーが始まると、事前の予告なしに旅行行程が次々に替わり当初首都クアラルンプールに宿泊の予定だったのが、急に近郊の町に変更された。問い詰めるHongさんに添乗員の一言は「早かれ遅かれクアラルンプールには行くんだから我々は事前の報告義務はないと思っていた。」という理解不能な返事のみであった。
さらに悲劇は続く、ツアーのパンフレットには3つ星ホテルに宿泊予定であったが、実際たどり着いてみるとそこはベトナムで言う1つ星程度の安ホテルで、ベッドの掛け布団は黄色いシミがついており、部屋には冷蔵庫もなく、テレビはあったがリモコンはなかった。
さらにクアラルンプールにそびえる高層ツインタワーに上るのかと思えばビルの下にバスを止めて数枚写真をとっただけでガイドは急き立てるように観光客らをバスに戻し、ショッピングセンターのはしごを始めるのであった。このように続いた約1週間のツアーを終えベトナムに戻ったHongさんは嘆いた、「こんなツアーだとわかっていたらもう少しお金を出してしっかりしたツアーに参加しとくべきだったわ」。
値下げ競争に火がついてしまった今、値段でお客を釣ろうとツアーの質を底まで落としても値段を抑えることのみに神経を集中させている。このことは少し高くてもいいからちゃんとしたツアーをという客層を完全に無視した形となっており、ツアーも格安なら内容も粗悪というようなツアーはいずれお客が受け入れなくなるということをいまだ旅行会社はわかっていないようだ。