来年1月1日に予定されている新算定基準による地価公示を間近に控え、現在不動産市場は様子見の状況を呈しており各不動産会社での売買は7月の新土地法公布以降停滞している。
土地法公布後、新土地使用権証書発行、住宅開発地区での住宅建設前の売買禁止(議定書第181号)など一連の詳細指導政令が公布され、今月3日には、土地収用に伴う立退き補償金を定めた議定書第197号と土地使用税納付対象規定を定めた議定書第198号が公布されるなど新土地法に関する政令がこれまでに5つ公布されている。
土地投機を抑制する目的でこのような一連の政令が公布されているが、来年1月1日に公示予定の新公示地価は住宅開発区などでの立退き補償金算定の基準とされるほか、土地使用税の算定基準にもなるためこの地価公示が不動産市場に与える影響はこれまでの政令よりも非常に大きく注目を集めている。
この新地価公示にともなう不動産価格は不動産市場関係者の間では高騰するとの見方が一般的になっている。サイゴン不動産総公社(Resco社)のNguyen An Binh社長によると、現在Resco社では約200件の住宅開発を行なっているが、既に政府より開発認可を受けた立退き段階の開発区では旧地価を基準にして立退き費用を算定しているが、不動産会社が独自に土地を買収し開発を行なっている場合はまもなく公示される新地価での立退き費用算定が義務付けられている。
Binh社長はさらに、開発中の住宅区において開発業者が2004年中に土地使用税を納める場合はその住宅区の分譲価格は変動しないと考えられるが、2005年以降に新地価基準の土地使用税を収めた場合、不動産分譲価格は税金の上昇分が上乗せされ値段が上がるためますます販売が困難になり、そのため業者は年内に税金を納めようとする動きが強まっていると話す。
また、新地価公示は低所得者にとってますます住宅購入が困難になることも予想されている。ホーチミン市での場合、例えば市内中心部のヴィラ(洋館)を金2000オンス(約1億1300万円)で購入した場合の土地使用税は、旧公示地価で算定すると約3億ドン(約197万円)だが、予想されている新公示地価で算出した場合10億ドン(約658万円)以上となる。このような高級物件を購入できる富裕層にとってこの負担はさほど重要な問題とはならないが3億ドン(約197万円)程度の物件をローンで購入する所得者層の場合、旧地価で算定すると数百万ドン(数万円)であった税金が数千万ドン(数十万円)となり低所得者にとって負担の度合いは非常に大きくなる。
これに対して国家経済研究所のTran Du Linh所長は、現在の不動産価格は投機により釣り上げられたもので実際の価格を反映していない。またホーチミン市内には開発中の住宅区が約1000ヶ所・6000ヘクタールあるが実際に分譲されている面積は2002年末で全体の10%、現在ではもう少し高くなっているが依然開発が遅れており供給が需要に追いつかず、これが不動産価格の高騰に原因となっているとした。
さらにLinh所長は、新公示地価は売買時に課される税金が高くなるためこれまでのように土地を“転がして”利益を得るような不動産投機を抑える作用があり、結果不動産価格は引き下げられ実際の価値を反映するレベルに戻るだろうと述べている。