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夜9時、チャウさんはジャケットを羽織り、革靴を履くと、指定された飲食店に向かった。
お客さんから自動車のカギを受け取り、行先を確認すると、携帯電話を取り出し、自動車の外観と運転席を動画撮影する。もともとあったキズなどは、特に念入りに撮る。後々の苦情を避けるためだ。最後に客に透明な袋を渡し、携帯電話や時計、アクセサリーを入れてもらってから、ハンドルを握る。
もともと10年以上タクシー運転手をしていたチャウさんは、自動車学校の先生を経て、つい3か月前にこの仕事に乗り換えた。飲酒運転による事故を多々目の当たりにしたことが、きっかけだった。
飲酒運転による交通事故は、ベトナムでかなり頭の痛い問題だ。国家交通安全委員会の報告によると、2022年1~11月期に発生した交通事故は1万件あまり、死亡者は5800人。事故件数のうち40%、死亡者数のうち11%は、飲酒運転に関連するものだった。
ベトナムでこういった運転代行サービスが増え始めたのは、2019年に飲酒運転に対する罰則が強化されてからだ。
運転免許さえあればできる仕事、ではない。運転代行サービスを提供する会社はドライバーを厳しく選定しており、ハノイ市のある会社では、少なくとも5年以上の運転歴があり、一般的な車種から高級車まで運転でき、ハノイ市内に戸籍があり、経歴が確かな運転手を選び、服装からサービス態度までのトレーニングを経た人のみを業務に就かせている。
帰宅途中でお客さんが眠り込んでしまったような場合には、お客さんを背負って家族に引き渡すこともある運転代行サービス。費用は夜間で運転手の経験や移動距離によって20万~50万VND(約1200~2900円)、運転手を1日借りる場合は100万VND(約5800円)程度となっている。