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メコンデルタ地方カントー市ニンキエウ区アンクー街区に住むレ・ティ・サンさん(女性・78歳)の6m2ほどの小さな家の真ん中には、黄色に塗られた墓がある。先祖や家族の墓というわけではなく、赤の他人のものだ。
結婚してカントー市で家を買って暮らしていたサンさん夫婦は、事業に失敗して借金がかさみ、家を売り払って墓地の一角に掘っ立て小屋を建てた。数十年を経て街が発展し、墓地が移転した際、サンさん夫婦の小屋は合法化された。夫婦は結婚した息子の家族にこの家を譲り、再び近くの墓地で「仮住まい」を始めた。それが今の家だ。
2009年に夫が亡くなってからは、見知らぬ女性の死者と共に暮らしている。サンさんは「毎日線香を手向け、食事も寝るのも一緒なので友達のよう。怖いと感じたことはない」と話す。
アンクー街区祖国戦線幹部の男性によると、テト(旧正月)や祝日などの機会にコメや現金をサンさんに支給している。家の修理を警察に相談したこともあったが、正式な書類がなく、住宅地でもない人の土地に建てた家であるため、何もできないと断られたという。