[コラム]
第4回【ベトナム食図鑑】フォーとブンの違い~絶品の郷土料理のご紹介
2019/12/09 10:35 JST更新
みなさん、こんにちは!ホーチミン在住のベトナム人 ICONIC のHanです。コラム 「【日本人が知らない】ディープなベトナム案内」 では、ベトナムでの旅行やグルメ・文化・ショッピング・その他おもしろ情報を発信していきます。
ベトナムの定番麺料理といえば、フォー、ブン、バインカインなどがありますが、みなさんは食べたことがありますか?実は、これらに使われる麺はすべて種類が異なり、フォーにはフォー専用の麺が、ブンにはブン用の麺が存在します。ベトナム在住の日本人の友達に「フォーの麺とブンの麺は違うよ」と言うと、びっくりされますが、きっとフォーが美味しくて、夢中で味わっていて気付かなかったのかもしれませんね。
実際に麺の違いを判別するのは簡単ではありません。そこで今回は、見た目が似ている白い麺料理について解説します。
ベトナムを代表する伝統料理「フォー」
フォー・ブン・バインカイン・バインダー・ミエン(麺)・フーティウなどの白い麺には、主にうるち米や五穀のでん粉を使用しますが、製造工程が全く異なります。ベトナムの伝統麺フォーは、厚さ1.5mm、幅3~4mm、長さ20cmに切られた長方形のような断面をしている平麺です。フォーは麺に肉類や野菜、調味料を加えて食べますが、麺が美味しさを左右するため、重要な役割を果たしています。
昔は複雑で時間のかかる製造工程だったようですが、今は製麺機を使用し、自動化或いは半自動化となり製造されています。現代では食べることのできない手作りのフォーには、フォー本来の美味しさがあったのでしょう。
濃い色をしたスープの伝統的なフォー
引用:
Restaurants in Hanoi
最近のトレンドは、あさりを使用したクラムフォーです。透き通った出汁に柚子胡椒が効いています。
クラムフォー
引用:
PHUNUTODAY
ファンが通いつめる美味しさ!郷土料理のドライフォー
フォーはスープとともに食べる印象がありますが、混ぜそばのようにして食べるドライフォー(汁なしフォー)は、スープのフォーとはまた違った美味しさがあり、独自の食文化を生み出しています。特に、少数民族ザライ族が居住する中部
ザライ省 のドライフォーが絶品で、これを食べるために、遠くからわざわざ訪れるファンもいるほどです。郷土料理ならではの独特な味が、グルメな人たちを魅了しています。
ザライ省の名物ドライフォー
引用:
Festivalcongchieng
もし中部に行く機会があれば、
クアンナム省 のクズイモフォーも味わってみてください。クズイモ粉から作った麺はコシがあり、ニンニクや油、ピーナッツ、ツボ草を和えていただきます。その美味しさは、忘れられない味です。
クアンナム省のクズイモフォー
引用:
innotour.vn
フォー皮春巻きに、揚げフォーまで!?美味しい変わり種
フォーを皮にして牛肉や野菜を包み、ドレッシングに付けて食べるフォークオンという料理もあります。ハノイの食通たちから長年愛されており、特別な位置づけとなっています。
フォー皮の生春巻き
引用:
H?I Đ?U B?P Á ÂU
揚げフォーは、何回か折って揚げたフォーの皮に、野菜と牛肉を添えていただきます。きつね色の見た目が食欲をそそり、その見た目通りの美味しさです。
揚げフォー
引用:
ĐÀO T?O B?P VÀNG
フォーの油揚げもあります。麺を適当な大きさに切って、油で揚げて丸い形に成型します。
油揚げフォー
引用:
Hôm nay ăn gì
その他にも、フォーサオチュアゴット(甘酸っぱいフォー)があります。牛肉と胃袋(ハツ)を加えたフォーに甘酸っぱいソースを加えた、優しい味です。
甘酸っぱいフォー
引用:
kenh14.vn
以上のように、一般的なフォーに限らず、バラエティ豊かな美味しいフォーがベトナムの職人達によって生み出されています。なお、ベトナム国外でフォーを作ろうとする時、フォー麺がなくてフーティウで代用することもありますが、そこまで違いは感じないと思います。
地元民に親しまれる丸麺の「ブン」
次に、ブンについて説明します。ブンはフォーに次ぐベトナムの人気麺の一つですが、多くの旅行者がフォーと間違えてブンを食べて、でも美味しいと感じているようです。フォーとブンは何が違うのでしょうか?
ブンは白くて柔らかい丸麺で、うるち米の澱粉から作られています。これを型に通して製麺し、熱湯で茹でて調理します。ブンもフォーと同じく、かつては手作業で作られていましたが、生産量を上げるために現在は機械生産が主流となっています。
ブンには以下3種類があります。
【ブンロイ】ブンの中でも特に人気です。ブンはスープを加えたり、つけ麺にしたり、混ぜそばのようにしたりと色々な食べ方がありますが、ブンロイは主にスープとともに食します。
【ブンバット、ブンラー】つけ麺用のブンで、口径4~5mm・長さ30~40cmに絞り出して作ります。食べやすいように短く切っていただきます。
【ブンマム】他のブンよりも細い、素麺のような形状です。あまり人気ではありません。
ハノイ名物のつけ麺ブンチャーと、混ぜそば風ブンティットヌオン
昔ながらの伝統的なフォーはもう食べられないと先述しましたが、伝統的なブンも同じく、今はもう食べられません。またどのような起源だったのかも分かっていません。しかし、新聞等の情報を調べたところ、おそらくハノイのブンチャー(ベトナム風つけ麺)とホーチミンのブンティットヌオン(焼き肉入りブン)がそれに近い料理なのだと思います。
ハノイでは玉ねぎ・にんにくのみじん切りを豚肉と合わせ、丸く成型し、炭火焼きにします。それと野菜、つけ汁、麺をそれぞれ器に盛って、つけ麺風にしていただきます。一方でホーチミンでは、肉塊を切り分けて串焼きにした豚肉と、野菜、麺をすべて1つの器に盛り、つけ汁を回しかけ、混ぜそばのように和えていただきます。ハノイ名物のブンチャーですが、ホーチミンでもこうして手軽で美味しいブンが食べられます。
ハノイのブンチャー
引用:
kenh14.vn
ホーチミンのブンティットヌオン
引用:
Foody.vn
「臭いけど美味しい」、マムトムを使ったブン料理
同じくハノイ名物のブンダウ・マムトムも外せません。ゆで豚、野菜、ブン、厚揚げ豆腐などを、金柑とマムトム(えびを発酵させた紫色の調味料)を加えたつけ汁につけていただきます。さらに砂糖・チリを加えるとパーフェクトな味わいです。外国人の方はマムトムの味があまり好きではないと思いますが、できればチャレンジしてほしいです。
ブンダウ・マムトム
引用:
TEEN A Teen
ブンダウ・マムトムと似ている、スープ入りのブンがあります。ブンマムとブンリエウです。マムカー(魚醤)とマムトムで味付けしており、エビ、イカ、豚肉、野菜と一緒に食べると、非の打ち所のない美味しさです。
ブンマム
引用:
Dien May XANH
ブンリエウ
引用:
Muoi Hai Cung Hoang Dao
年中行事から祝いの席まで…地方のブン料理の魅力
誰もが知るブン料理といえばブンボーフエです。ベトナム中部の古都フエの名物で、牛すね肉や豚肉のスライス、野菜、ブンにピリ辛のスープを加えたものです。
ブンボーフエ
引用:
NGH? B?P
ブンタンはテト(旧正月)後に食べる料理で、新年を迎えて残った食材をお椀に入れて食べる風習があります。錦糸卵やゆで鶏、人参、椎茸などを入れます。見た目も綺麗であっさりとした味わいです。
ブンタン
引用:
Yeu tre.vn
こちらは地方の伝統料理バインホイです。米粉からできた麺でブンラーに似ていますが、製造工程はより複雑です。ねぎや揚げ豚、焼き肉、内臓を調理したものなどと一緒に食べます。国民の祝日や年忌、式典で欠かせない料理です。
バインホイ
引用:
Cookpad
最後にバインカインを紹介します。バインカインは魚やエビで出汁をとったスープに、米粉・小麦粉・片栗粉、あるいはタピオカ粉から作った丸麺、具材を加えていただきます。ニラ入りのバインカインヘー、雷魚入りのバインカインなど、地域によって調理方法が異なります。
ベトナムの麺料理は本当に多種多様で、一見同じに見えるフォーやブンも、調理方法によってその美味しさを最大限に引き出すことができます。これは私たち民族の誇りです。この記事をきっかけに、みなさんがベトナム料理についてもっと興味を持ってくれることを願います。
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