[コラム]
【第10回】ベトナムで高リスクの日本脳炎~蚊対策とワクチン接種で予防を
2018/06/19 11:30 JST更新
日本脳炎は、極東から東南アジア・南アジアにかけて多くみられ、アジア以外の南太平洋の地域でも、ウィルスの広がりが明らかになっています。1935年に日本で初めてウィルスが発見されたことから、「日本脳炎」と呼ばれるようになりました。
日本脳炎の概要
日本脳炎は、神経系の障害を引き起こす脳炎です。蚊の媒介によって日本脳炎ウィルスに感染することで発症します。重症化すると、後遺症を残したり、死に至ることもあります。
日本脳炎は、ウィルスを持つイエ蚊に刺されることで人間に感染します。また、農村部で発生しやすく、季節性があるのが特徴の感染症です。亜熱帯地域では、春から秋(3月~10月)にかけて年間通してみられますが、特に6月~9月がピークとなります。また、蚊は特に夕方から夜間にかけて活発に活動します。豚や水鳥にも感染しますが、人から人へは感染しません。
日本脳炎が多く見られる地域では、0~14歳の子供の10万人中5人に発症、15歳以上では10万人中0.6人に発症しています。発展途上国では、日本脳炎による死亡率は35%以上と高く、毎年約1万人の死亡ケースが、全世界で報告されています。
症状
日本脳炎の症状は様々で、発熱、頭痛、嘔吐、筋肉痛などが見られます。これらの症状の後、意識障害や発作、麻痺、過呼吸、その他の脳神経症状が現れます。
対処法
日本脳炎には有効な抗ウィルス剤がなく、頭蓋内圧のコントロールや呼吸困難の回避、痙攣のコントロールなど、症状緩和の対処法が取られます。
予防
第一の感染予防は、蚊に刺されないことです。蚊は夜間に活発になるので、蚊が多い地域に住んでいる、または行く予定がある場合は、就寝の際の蚊帳の使用、そして野外に外出の際は
ディート 成分配合の蚊除け剤の使用をしましょう。また、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を抑えることも効果的です。
また、蚊が繁殖しやすい環境を作らないことで、リスクを下げることができます。防虫剤を散布する、ボウフラを食べてくれる魚を水田などに放し飼いする、池の水を定期的に交換するなどの対策があります。
日本脳炎ワクチン
日本脳炎ワクチンの予防接種を受けることにより、危険な症状を避けることが可能です。日本脳炎ワクチンの予防接種は、各国で異なります。ベトナムにおいては、1歳を過ぎてから、1~2週間の間隔で2回、そしてその1年後に1回の計3回の皮下注射を行います。その後、15歳頃までに3~4年に1回の追加接種を行います。
成人は、過去にワクチン接種をしていない場合は、小人同様に3回の接種が必要となります。過去に接種をしている場合は、追加接種のみ必要となります。
日本脳炎ワクチンの明確な有効期間は、はっきりしていません。17歳以上で、感染のリスクが高い地域への滞在予定があり、直近の接種が1年以上前の場合、追加接種が必要となります。ワクチンにも様々な種類があり接種方法が異なりますので、過去の予防接種歴などを医師に相談しましょう。
ベトナムにおける日本脳炎の状況
ベトナムにおいては、1952年に初めて日本脳炎発症のケースが報告されました。ベトナム全土で感染の可能性がありますが、米、果物、野菜の栽培、養豚が盛んな北部の農村部で特に感染率が高くなっています。
過去には、年間2000~3000件の脳炎の内、60%以上が日本脳炎だったという報告があります。現在は、ベトナム国内でも日本脳炎の予防接種が可能となっています。
近年では、日本脳炎ウィルスによる脳炎は10~15%に留まっていると報告されています。2017年1月から現在まで、ベトナムの31県で325件の日本脳炎のケースが報告されており、その内5人が死亡しました。脳炎の発症率は、北部で66%、中央部で12%、高地部で18%となっており、その内15%が日本脳炎とされています。
この機会にお子さんの予防接種の状況を医師に確認しましょう。ファミリーメディカルプラクティスでは、新たに着任した小児科専門医 吉松昌司医師がアドバイスします。
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<2018年6月着任の日本人医師>
吉松昌司 医師
ファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン市
小児科
小児科医として、18年の経験を持つ。フィリピン、カンボジア、ガーナにて小児結核や感染症のプロジェクトにも携わってきた。日本では、発達障害を持ち不登校などに悩む子供達のサポートもしてきた。
2018年6月からファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン市に勤務。ベトナムにおいても、邦人・外国人ファミリーが安心して生活できるようにサポートをしていく。
吉松医師の詳しい経歴は こちら |
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