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皆様、ご無沙汰しております!
Threads 代表の東山です。
今回は、 少数民族の真の姿、その中でも普段は垣間見ることのない恋愛というテーマ に焦点を当てて紹介したいと思います。
さて、今回の主役はこの方May(マイ)さんです。
赤いスカーフを頭に巻き、 襟周りに白とピンクのビーズでコーディングが施されたネイビーのシャツ。
そんなザオ族特有の衣装を身につけ、穏やかな笑顔を見せてくれるマイさんは、サパの T? Phìn(ターフィン) という村に生まれ育ち、遠方に嫁ぐこともなく16歳の時に同じ村に住んでいた青年と結婚し、4人の子供を授かりました。
現在は主に孫の世話と刺繍をするのが日課だと言います。
ここまでは一見どこにでもあるような話ですが、彼女は4年前に突然人生の転機を迎えることになります。
それは一本の電話から始まりました。
チョイ:「もしもし、マイさんですか?」
マイ:「ええ、そうですが。あなたは?」
チョイ:「私は村の役場に勤めているChoi(チョイ)です。旦那さんの訃報を聞きました。この度は本当にご愁傷様です。 私も妻を亡くしたばかりで、現在のマイさんのお気持ちがとてもわかります。お互い大切な人を亡くした者同士なので、私に何かお手伝いできることがあれば何でもおしゃってください・・・。」
マイさんのご主人はつい最近アルコール中毒で亡くなりました。
その死はあまりにも突然で、家族みんなが静まる家の中に座り込んで、誰も言葉を口にすることなく深い悲しみに包まれていました。
そんな絶望の淵にいたマイさんに手を差し伸べてくれたのが、村役人であるチョイさんでした。
チョイ:「今日は市場へ一緒に行きませんか?一人で山道を歩くのも大変だろうし、一緒に行きましょう。」
マイ:「えーと・・・。ご親切にありがとう・・・。」
それが二人にとって初めてのデートでした。
太陽はいつものように眩しい光を放ち、サパの大地にエネルギーを注いでいます。
しかし、今日はいつもと違って、その眩しい光がとても不都合なものに思えてしまいます。
照れているのせいなのか、それとも眩しいせいなのかわかりませんが、二人は顔を上げて目を合わせることもなく、ひたすら足元だけを見て、街へ向かって歩きました。
しばらく歩くと、太陽が背後に回り、ふと気づくと二人の影が目の前の砂利道に映し出されていました。
チョイ:「(私たちの)影ですね。」
しばらく続いた沈黙をチョイ さんが勇気を振り出して破りましたが、
マイ:「ええ、影ですね。」
その時の会話はそれだけで終わってしまいました。
ザオ族には再婚の風習がなく、働き手の夫が亡くなった場合、妻は長男と一緒にこれからの家庭運営をしていくのが一般的です。
昔の日本のように大家族で暮らす習慣があるため、息子が毎日家事を手伝いに来るのも特に珍しいことではありません。
そんな家族主体である環境の中、突然チョイさんが手を差し伸べてきたことに対し、マイさんは少し戸惑いを感じていました。
それから、何ヶ月かが経ったある日・・・。
たまたまマイさんの家の修理に来てくれていたチョイ さんが急に話を切り出しました。
チョイ:「マイ さん、実は頼みごとがあるんですが・・・。」
マイ:「どうしたの?」
チョイ:「実は、私の息子にそろそろ結婚して欲しくて、奥さんを探しているんです。しかし、私一人で相手方の家に行って結婚を申し込むのは印象が悪いし、その子がうまく働いてくれるかの判断もつかないので、私の妻として一緒に行ってくれませんか?」
マイ:「え・・・?いや・・・、私たちは本当の夫婦でもないですし・・・。」
虚を突いたようなチョイさんの提案に、マイさんは驚きを隠せませんでした。
チョイ:「それじゃ夫婦になりましょう。二人で一緒に暮らせば、生活面で色々と助け合うこともできるし。ほら、我々歳も歳だし、万が一何かあった時に、誰かそばにいる人が必要でしょう?」
それはマイさんにとってあまりにも衝撃でした。
『今の・・・、もしかして・・・プロポーズ?』
マイさんはとても驚きましたが、チョイさんの気持ちを懸命に理解しようとしました。
マイ:「確かに、私たちはお互いパートナーを失って、あなたが色々助けてくれるのもありがたい。でも、私の気持ちはまだそこまで達していないので、今あなたの妻になることは出来ません。ごめんなさい・・・。」
チョイ:「そうですか。でもそのうちきっとわかるよ。二人が一緒になった方が良いことがある。もう少し考えて頂きたい。では、明日も一緒に市場に行こう!」
チョイさんはあたかも先程の告白がなかったように、また次の日からマイさんのところへ通い続けました。
山岳地域での結婚について、この辺りではまだお見合い結婚が主流です。
サパでの一般的な結婚の流れとしては、?男性の両親が知り合いのつてで花嫁候補を選び出し、?最初の訪問では鳥や酒などのプレゼントを持って花嫁候補宅を訪ね、?その意を伝え、もし事がうまくいき相手の両親も同意すれば、?ウェディングドレス用の生地を用意して花嫁候補に作らせる、というものです。
でも、そこからのプロセスが意外と長いんです。
なぜなら、花嫁候補が全て手刺繍のウェディングドレスを2、3着作らなければなりません。
そのためには最低でも一年以上はかかります。
しかもその間、その二人は事実上の婚約者ですが相手に会うのは禁止されています。
二人にとって辛い時間ではありますが、花嫁候補はウェディングドレスを作りながら、未来の旦那さんとの家庭を目一杯想像するしかありません。
さて、マイさんの話に戻ります。
1回目の突然の「告白」から時が過ぎると共に、マイさんも徐々にチョイさんへ心を開くようになっていきました。
彼の一所懸命で勤勉な姿は、マイさんの目にとても輝いて見えます。
そして、2回目のプロポーズの時が近づいてきます。
すでにしばらくの期間を共にしてきた二人ですが、未だに出会った頃のような初々しい関係を保っています。
まだ手も繋いだことがなく、未だに会うと少し照れくさくなると言います。
マイ:「私たちは恥ずかしいから、都市に住む人みたいにできないよ。だけど、好きという気持ちは着実に実感していた。」
そうマイさんは教えてくれます。
心を徐々に開いてきたマイ さんもそろそろ「Yes」を言う準備ができてきたようです。
チョイさんは、まず自分の息子にマイさんとのことを打ち明けなければと考え、息子に話を切り出しました。
チョイ:「お前も嫁を探さなければいけない。もう一人のお母さんが居た方がいいだろう。最近あそこのマイさんと色々共にしていて、人も決して悪くない。」
息子:「お母さん死んでからそんなに経ってないでしょ?俺は嫌だよ。相手も結構歳でしょ?もう一回葬式するのはもううんざりだ!」
息子には猛反対されてしまいました。
せっかく近づいた二人の距離は、息子の反対によりまた開き始めてしまいます。
そして同時に、二人の噂も村で広がるようになり、築き始めた関係が崩れていくようにも見えました。
お見合い結婚という、恋愛を必要としないザオ族の婚姻生活でも、家族が一人一人強く生きています。
サパの人にとって家庭の成功の秘訣とは、常に相手に恋心を抱くというよりは相手を尊敬、感謝することにあるかもしれません。
果たしてその後、二人はどうなったのか!
この話の続きと衝撃の結末は次回紹介させていただきます!
(すみません、ショートムービーも作成中なのでもうしばらくお待ちください!)
今回はマイさんの話を通じて、少数民族のリアルな恋愛観をのぞいてみました。
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