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[コラム]

「途中下車してOKな人生もいい」和島祐生さん/会社経営

2016/03/28 09:20 JST更新

ベトナムで人材紹介を行うJellyfishHR がお届けするこのコラムでは、現地で実際に生活をしている日本人に、ベトナムでの生活、ベトナム人との仕事、日本との違いなどをインタビューしていきます。
みなさんのタイムリーな悩みを解決するヒントになるかもしれません。

第3回は、ハノイで起業した 和島祐生さん(27歳)です。
外資系コンサルのアクセンチュアに新卒入社しましたが、2年3か月で退職。ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在した後、ヨーロッパを周り、東南アジアで働き始めました。そして、2015年2月にハノイで起業。自分の道は自分で切り開く若き男性のインタビューです。このベトジョーライフでもコラム 『勝手にハノイ広報局』 を執筆されています。
海外志向の高い読者も驚く彼の生き方からは、学ぶことがたくさんあります。
 

ラジオ番組でこのインタビューを公開!?

Jellyfishのサイト でインタビュー記事をよくご覧頂いているとのことですが、インタビューされる側になって、心境はいかがでしょうか?
 
和島: 自分はいつもインタビューをしている側なんだけど、インタビューされた経験があまりないので、緊張しています。せっかくだから、ベトナムや仕事やシェアハウスの話を録音して、私が運営する ジェットスターラジオ で流してみますね。「海外RADIO」という名前でPodCastで公開しています。(本インタビューの音源は こちら から)
 
−おぉ、いきなり宣伝ですか! 全く根っからの自由人ですね! とまあ、こちらも緊張してきました・・・。
 
和島: ちなみにもう録音してるよ。 「まさかのMC交代でラジオを流します!」 って吹き込みでも入れておきますね。
−承知しました!
 

実は元々英語は得意ではなかった

早速ですが、和島さんより自己紹介をお願いします。 リスナーと読者両方に伝わるようにしてくださいね!
和島: 和島祐生と申します。現在27歳で、駒澤大学、つまり日東駒線の駒を卒業し、アクセンチュアという 外資系企業に就職 しました。2年3か月くらい働いた後、 オーストラリアに1年半ワーキングホリデー で行って、その後 マレーシアで2か月半程SMSという会社でインターン をしました。その後、 ヨーロッパを3か月旅行 しました。その旅行のきっかけは、友達がバンドをやっていまして、今ではインディーズバンドではありながらもかなり有名になって、フランスのジャパンエキスポに出演するくらいなんなんですよ! それを見に行こうと思ってヨーロッパに行きました。
そのうちに、SMSからシンガポールの本社で働いてみたらとお声がけ頂いて、本社採用に。なんと最初から海外事業部に入り、医療観光のセクションを担当しました。早速 シンガポールで1か月半働き、ベトナムに来た のですが、その会社を2015年の2月いっぱいで退職。現在は、 ハノイで VJPartner という会社を立ち上げ て、とりあえず今のところは生活ができています。

− ちょっと待ってください、外資コンサル、オーストラリア、ヨーロッパ、マレーシア、シンガポールにベトナム・・・。かなり濃い人生を送っていますね。本当に27歳ですか?
和島: 嘘はついていないです(笑) もともとこんな人生を送るイメージができてなかったけど、徐々に濃くなってきました。
− 新卒入社してから海外経験が豊富になりましたが、もともと海外志向があったのですか?
和島: 大学1年生の時にシアトルに短期留学で1か月ほど滞在したくらいで、それ以外海外に行ったこともないし、必修の英語を落としたくらいでした。
− 英文学科出身の私も英語の試験落ちたことあります(笑)
和島: 本当に英文学科?? 実は私は英語が一番苦手だったので、海外志向があったわけではないです。でも、アクセンチュアに入社したら、新人は「ブランニュー」と呼ばれ、教えてくれる人は「ファカルティー」と呼ばれます。予算のことは「バジェット」と言うし、いつの間にか海外かぶれになりました。
− まあ、どちらかというとルー大柴じゃないですか?
和島: 「トゥギャザーしようぜ!」 って感じ?って、なんでやねん!(笑)
まあ、会社を辞めた時は仕事が忙しく、毎日電車で東京タワーが消えるのを見ていたんですよ。っていうか、辞めた時の話を話してもいいですか?
 

終電帰りで弁当を選んだ時に悟った哲学

− (恐らくこれが彼の核心となる話だと思うので)どうぞご自由に!
和島: ありがとうございます。いかにして和島はアクセンチュアを辞めて旅人になったのか?という話です。アクセンチュアはご存知の通り給与が高いのですが、毎日 「もうすぐ終電の時間かな?」 という残業生活を続けておりました。よくある日本人の働き方と言えるのかな? 
それで、いつも洋楽が好きで、毎日電車で聞いていたのですが、その時はたまたま気分転換で邦楽を聞いていました。と、なんと、椎名林檎の「罪と罰」が流れてきました。 「ああ!疲れているんだからやめてくれ」 ってなって、次に尾崎豊の「スクランブリングロックンロール」という曲が流れてきて、サビのところで 「今自分のくらしが自分を傷つけると泣いてる」 と。説教聞きたくないよ!って心境になったので、即座に音楽を聴くのを止めました。
その時車窓に映る自分を見つめながら 「さて、一体私はどこに向かって進んでいるのか?」 と考えました。ある種の鬱状態だったのかもしれません。

当時東十条というところに住んでいて、終電で帰ると大体午前1時くらいになるので、松屋か日高屋か、オリジン弁当くらいしかないんですよね。その時はオリジンを選び、大好きな竜田唐揚げ弁当を頼んで、ベンチで待っていたその時でした! なんとイカズチが降りたんです!
− それはどんなイカズチだったのでしょうか?
和島: 「今ここで竜田唐揚げ弁当を自分で頼んだ。けれども、そもそもこの時間まで働いたから私の前に選択肢は3店舗しかない。強いて言うなら、直近の休日も仕事をしていたから、週末にスーパーに買いに行く暇もなく、家の冷蔵庫に何もなくて、家で食べることすらできない。さらに言うならば、このプロジェクトを選んだ時点で、はたまたこの会社を選んだ時点で、この日、この瞬間に私が竜田唐揚げ弁当を頼むことは仕組まれた運命ではないか?
例えば、1年後や2年後にマレーシアで現地料理を食べていることがあるのか? または、南米のスープを飲んでいることはあるのか? このままだとずっと竜田唐揚げ弁当を頼んでしまう自分しか思い描けない。」
− 仕組まれた自由に誰も気づかずにあがいた日々も終わったわけですね。
和島: ええ、支配からの卒業です。そして、私はオリジン弁当を受け取って、会社辞めることを決意。即行辞表を出しました。
− 悟られましたね。

新たな人生の転機はトマト栽培のご近所さん

和島: 次の日は朝起きて銭湯に行ってから会社に行きました。なんとまあ穏やかなことだったか。当時はきっと疲れていたのでしょう。ごちゃごちゃしながら生きていたんです。
話を戻すと、 「もともと海外志向はあったのか?」 ところですが、近所に住んでいた人が過去にワーキングホリデーに行っていて、楽しかったと言っていたのがきっかけかな。
「何すんの?」 と知人に聞いたら、 「え? 畑でトマトを収穫するんだ」 といっていたんです。よくわからないけど「楽しそう!」ってかなりテンションが上がりました。 「英語もそんなに話せるようになるもんなんだ!」 ってなるし、身近にそういう人がいると刺激的で、無駄にお金も使っていなかったので、3週間後に貯金使ってオーストラリアに行ってきました。実際、海外でどうこうしたいというのはなかったんですよね。
− あまり計画性がなさそうに見えます。
和島: そんなことないよ。計画性はあるけど、敢えて目標はあまりない。ファーストキャリアの影響か、計画と手順は大事だと思っています。何かしたい時は手立ては考えますが、世の中をどうこうしたいというのはないんです。
− 自分の目標はないのですか?
和島: 短期的な目標としては、ハノイで会社を立ち上げて、ずっとベトナムにいますが、私は日本が好きなので定期的に帰りたいと考えています。だから、仕事を頑張って、仕事で日本に帰る状況を生み出すことを目標にしております。
− 確かに、たまには日本に帰りたいって思いますね。

途中下車もOKな人生でもいいんじゃない?

和島: ちなみに、私の考える海外どうこうというのは、大きい目標を立てる必要もないとすら思っています。大きい目標掲げても進めないのでは意味がないし、海外に来ても来ただけになってしまうので、さじ加減が大事です。
目標の有無にかかわらず、やりたいことがあればやりましょうというのと、嫌だと思ったことは素直にやめてもいいことを伝えたい。
例えば世界一周をやっているとして、理由はなんであれ、1年間や2年間かけて行ってみたけど、実際のところ3か月くらいで飽きてきているのに、惰性で続けてしまう人もいる。そうなると素直な気持ちで旅ができていない。仕事をやめるように、世界一周も合わないと感じたら、やめてもいいと思う。
実際ヨーロッパを旅していて、一人だったからつまらなかったんです。これ自分には合わないなって感じて、元々世界一周もやろうと思っていたけど、実は途中でやめてしまったのです。
− 言っていることに重みがありますね。
和島: だってこういう生き方って健康的だと思わないですか? 嫌なことを続ける必要はないと思うんです。だって、無理やり続けるのは重いですよね。
− やっぱり自分が楽しいかどうかも大事ですね!
和島: :旅に出る前と旅の最中で感じ方は変わるから、 途中下車はOKだし、むしろ終点すらない のだと思います。 「頑張ることは良いことですが、集中しすぎてあまり周りが見えなくなっているかもしれないし、どうしても視野が狭くなってしまいます」 とタモリさんが言っていました。
− 非常に勉強になります。
 

違いを考える必要性そのものを問う

− ところで、日本とベトナムを過ごしてみて感じる違いは何かありますか?
和島: え? 何もかも違うでしょ! この間あった話なんですが、知人がベトナムとの違いを話していて、日本には年に2回収穫の時期がありますよね、畑って。だからそのタイミングをミスると一族が路頭に迷ってしまうので頑張らなければならないけれど、ベトナムは一年中収穫できて、いつでも食べ物を取れるから、計画を立てる必要がないようです。
ベトナムのローカル企業と一緒に働いていますが、彼らは計画を立てないのです
ね。どういう手順でやるべきなのか、という話が最初に出てくるはずが、全くできていない。
− 最初はどういう話をされるのですか?
和島: たいていやるのは、「やりたいこと」と「知りたいこと」をリストアップしてもらうことです。なぜかというと、彼らは会議の時はメモも持ってこずに言いたいことだけ言って帰るからです。 「え?その会議の目的は?」 ってなりますよね。
決めるべき事項があったり、意識共有などの目的があったりしますが、ふわーと始まり、みんなふわーと満足して帰ります。それは無駄だから辞めようと言って、リストアップしてもらうことを提案しています。毎回書いてもらっています。
結局違いはなんだろ、計画性かな?
− 日本人との違いは何かありますか?
和島: 計画性の点と、あとは気にかけてくれることかな?
例えば、会社の中でもすごく話しかけられるんですよね。 「Hey、wajima!」 みたいな感じでね。トータルして良い人たちだと思います。人懐っこい感じしますね。
でもなんだかんだ、違いを考える必要ないって思う。良いことばかり言っている人は「猜疑心持てば」と思うし、悪いことばかり言っている人は「視野狭い」とも思うし。
ベトナム人から、日本人はすごいとか言われることはありますが、 「本当?」 ってよく思う。プロフェッショナルな環境であると言われますが、彼らと私たちでは考え方が違うかもしれません。チームワークを重視できる人がプロフェッショナルな人なのか、個人のスキルが高い人がプロフェッショナルなのかわかりません。
− 私もベトナム人の転職希望者とよくお話しますが、プロフェッショナルの定義はみんな曖昧ですよね。

 

日本人が作り上げたイメージを守る役割

和島: 結局すごいと思われているのは多分日本の先人のことじゃないのかな? SonyやTOYOTAを作り上げた人とか。いま生きている我々日本人からすると 「このようなイメージを作り上げて頂きありがとうございます!」 って思えます。そのおかげで仕事ができているし、日本が魅力的な市場だとベトナム人に思われています。
− 感謝すると同時に、自分たちのバリューについて考えないですか?
和島: そうだね。でも今あるリソースやイメージを利用できるのであればいいのかな、なんて思います。その代わり、今までの人たちが作り上げた日本のイメージを壊さないように、そして日本人はレベル低かったんだなと思われないように頑張らないといけないですね。
− 改めて、実際に海外で働いて、「海外で働く」 というのはどういうものなのかシェアして欲しいです!
和島: 私が東京で就職して、海外に働いてみて外に出てみましたが、大阪の女の子って気さくで楽しいじゃないですか? 海外で大阪の人たちと出会い、大阪で働いてみたいなって思いました。嫌だと思った日本の仕事は東京だったので。もしかしたら香川県も自分に合うかもしれない、うどんが好きなので。
海外というくくりでみても、シンガポールでもマレーシアで働いたけれど、ベトナム人との働き方が違うと思います。
外に出て、まずベトナムで働いて合わないと思って帰国するのもったいないと思います。もしかしたらシンガポールだったら合うかもしれません。 「帰る」のではなく、「変える」選択肢を選べば良いと思います。
どうしても、戻る場所を日本においた上での海外というふうに考えている人多いけど、帰り先はマレーシアでも良いのじゃないかな?
− それ共感しますね! 私も中国にいたことがあるので、日本に拘っていないですね。
和島: 合う国もあれば合わない国もある。日本ですら合わないと思うのであれば、別に沖縄や北海道でも行けば良い。日本は実際良い国です。
だってね、僕なんて成田空港で泣いたんですよ。インタントのうどんと午後ティー飲んだだけで。(笑)
それでも海外に来てみたい人は来たらいいんじゃないかな?って思います。嫌だと感じたらやめればいいだけですからね。
最後に宣伝ですが、ハノイで シェアハウス「カトリン」 を運営しているので、いろんな話を聞きたい人は是非来てくださいね! 短期長期関わらずお待ちしております!
− 貴重で斬新な考え方を共有して頂き有難うございました!更なるご活躍を楽しみにしています。

※本インタビューは ジェットスターラジオでも聞くことができます
 

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