[コラム]
【第4回】狂犬病をご存知ですか?
2015/09/10 09:20 JST更新
今回は、いきなり質問から始めます。次の病気の中で、最も危険なものはどれでしょうか。
1. デング熱
2. エボラ出血熱
3. 狂犬病
当地ベトナムでもよく見られるデング熱ですが、実は75%は無症状で、重症化するのは5%程度、無治療であればそのうちの10%が死亡すると言われており、つまり致死率0.5%です。
2014年のエボラ出血熱の流行では、WHOによりますと、ギニアとシエラレオンでエボラ出血熱に罹患したと考えられる1万7280人のうち、6478人が死亡しており、致死率は37.5%となります。
狂犬病は、全世界で毎年5万5000人が死亡しており、 致死率は100% です。
狂犬病とは
狂犬病の予防接種といえば、日本だと飼い犬に行う予防注射のことを指しますが、これは日本が世界でも稀な狂犬病の心配がない国だからです。
厚生労働省のホームページ を見れば、世界の現状が分かると思います。ベトナムにおける2009年の狂犬病発生件数は64人に上っています。
狂犬病という名前から、犬から感染する病気で、犬に噛まれなければ大丈夫と思われるかもしれませんが、
犬だけでなくすべての哺乳類の、狂犬病に罹患した動物から、病原体であるウィルスをうつされると発症する 、とされています。動物との接触の際に、感染があったとされる目安は、皮膚が破れる、あるいは血がにじむ、です。ただ舐められただけなら大丈夫ですが、傷 をなめられたならばアウトです。噛まれるはもちろんですが、引っかかれてもアウトです。狂犬病に罹患する動物としては、
犬・猫・猿・コウモリ がよく知られています。
どのくらい身近でしょうか
当地ベトナムでも、お隣のカンボジアでも、身近なタイでも、観光地として有名なバリ島でも、狂犬病による死者が出ています。平成18年に京都市の音羽病院で死亡した患者の死因が、フィリピンで犬に噛まれて発症した狂犬病であることが判明したとき、日本では36年ぶりの狂犬病として話題になりました。
犬に噛まれたら
犬に噛まれるなどして、皮膚が破れてそこから病原ウィルスが侵入する可能性のあるような、動物との接触があったら、
すぐに信頼できる医療機関を受診してください。 飼い犬だから大丈夫と思ってはいけません。躊躇することなく直ちに医療機関を受診し、動物といつ、どのような接触があったか、また狂犬病予防接種暦の有無を伝えてください。
ちなみに、「犬に噛まれたから、狂犬病になるかどうか検査して欲しい」と言われても、そのような検査はありません。発症後ですら、検査で狂犬病と診断することは極めて困難です。
今から何をすればよいか
狂犬病予防接種がまだの場合、医療機関に連絡して、「狂犬病の暴露前予防接種目的」と伝えて予防接種の予約をとることを勧めます。最短3週間、合計3回の予防接種で完了します。接種スケジュールは、もし1回目が月曜日の場合(第0日と呼びます)、2回目は次の週の月曜日(第7日)、3回目は1週ある いは2週空けての月曜日(第21日あるいは第28日)となります。
これだけは覚えてください
狂犬病は発症すれば100%死亡する病気 です。予防接種がまだなら、接種を強く勧めます。もし、動物との危険な接触があったら、すぐに医療機関で受診してください。
最後に、子供にも普段から
もし犬などに噛まれたりひっかかれたりした場合は、すぐ親に知らせるよう、しっかり教えておく ことも、忘れてはいけません。
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<著者紹介>
Family Medical Practice Vietnam
奥田雅人 医師(ホーチミンクリニック)
内科、消化器科専門
岡山大学医学部卒業 内科認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
国際旅行医学会 認定医療職
2015年6月 着任までは住友別子病院に勤務し、年間1000件の胃カメラ検査、300件の大腸カメラ検査を担当していた。医師になる前は、石油採掘現場のエンジニアとしてエジプト、インドなどに駐在していた経験を持つ。
自身が海外駐在の経験者として、赴任者やその家族の気持ちがわかる医師となることを目指している。 |
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