[コラム]
5分で業界まるわかり!人材紹介会社・覆面座談会~後編:日本人の海外就職と人材業界の今後~
2016/08/27 06:00 JST更新
日系企業のベトナム進出が相次ぐ中、日系企業のベトナム人と日本人の採用需要も増えている。こうした人材を採用したい企業と企業に勤めたい人材を繋ぐのが、人材紹介会社の役目だ。今回、ベトナムの人材紹介会社に勤める人材コンサルタントの3人にお集まりいただき、第1回VIETJO覆面座談会をホーチミン市某所で開催した。
前回の「
5分で業界まるわかり!人材紹介会社・覆面座談会~前編:ここがもったいないよ日系企業~」に続いて、後編は「日本人の海外就職」をテーマに、海外就職の現状、海外就職を希望する日本人の傾向、そしてベトナムの人材業界の今後について語ってもらった。
<語り手>
Aさん 人材紹介会社勤務 40代
Bさん 人材紹介会社勤務 30代
Cさん 人材紹介会社勤務 20代
【日本人の若者の海外就職】
―――ベトナムで起業したり、ベトナム語を学んで現地でキャリアを作るという若者が増えている。しかし、「日本でうまくいかなかったから」、「英語や経験が不要だから」など、消去法でベトナムを選ぶケースも少なくない。海外で就職するにあたり、心に留めておくべきポイントは何なのだろうか。
A&B&C:海外就職、増えていますね!
B:現地採用から日本に帰って就職するパターンは成功しているんでしょうか?
C:成功している人はしています。ベトナムで勤務していた企業によるかもしれませんが、キャリアをしっかり作れる企業で働いていた人だと、日本に帰ってからも海外事業部などで活躍しているようです。
B:ベトナムで就職している人の中には、本当は他国で働きたいけれど無理だったから消去法でベトナム、という人も時々います。ベトナム(日系企業)での経験をもとに、ベトナム国内の外資系企業への転職を考える人もいますが、外資系企業となると実際はかなりハードルが高いですよね。
A:外資系企業に限らず、単に海外での勤務経験があるというだけだと、日本に帰国してから海外経験を活かして就職しようとしても厳しいのかもしれません。
B:語学だけなら日本の企業で働いていても学べますし。日本に帰った時、社内の経験でも社外の経験でもよいので、誰かに語れるようなキャリアを選ばないと、海外に来る意味がなくなってしまう気がします。
A:優秀なベトナム人が集まるスタートアップ&ネットワーキングパーティーに参加したり、他国の人で同じようにベトナムに勤務するビジネスマンと各国の商工会などで触れ合ったり。レタントン(注:ホーチミン市1区の日本人街、レタントン通りのこと)で始まり、レタントンで終わってはいけないですよね。
C:企業の仕事はどこでもルーティンワークが多いですよね?その中で、何を得るかは自分の関わり方次第なのだと思います。(海外に出て)外部の環境が変わっても、内部の日系企業の環境はあまり変わらないですし、外部の環境が変わっただけで自分も変わった気がしてしまうと、日本に帰ってからせっかくの海外経験が活かせないと思います。
B:海外就職という流れも、「チャレンジしてみたい!」だけで終わらないでほしいと思います。就職してから「自分に何ができるかを自ら探していく」ということは、日本で働いていても海外で働いても変わりませんから。
A:かつて中国就職がブームになりましたが、現在のベトナムにも同様のことを感じます。ただ、やはり受け入れ企業の中で、キャリアを積むことのできる企業が正直少ないというのが現状です。「うちの会社でキャリアは積めない。それでも海外で働く経験がしたいなら、ぜひ」ときっぱり言う企業は逆に潔いくらいで、候補者にも紹介しやすいです。
B:候補者の中で「国籍関係なくグローバルに活躍できる」ことに憧れてベトナムへ来る人も多いですけれど、グローバルな仕事というよりも、現実は「日本人だから」という特性によって得られる仕事のほうが多いですよね。
C:そういう仕事の中でも、何かを身につけて、そこから次に繋げられるような動きができるかが重要です。
A:実際に、そういう環境で自ら努力して大きく変われる人もいます。言語を勉強してネイティブ並みになったり、現地で人脈を作ったり。半年でベトナム語をペラペラに話せるレベルまで習得した知り合いは、給与の高いローカルの企業に転職しました。色々なケースがありますが、人材紹介としては候補者の背中を押したいから、「ベトナム来たほうがいろんな機会は増えるよ!」と言うしかないですけれどね(笑)
【日本人の傾向と人材業界の今後】
―――海外就職を目指す日本人が増えている一方、あえて海外を望まない人も多い。せっかく海外に出るのなら、日本ではできなかったことをしてほしい。人材業界も、企業や人材を相互に紹介するだけでなく、就職後の育成にも関われる仕組みがあればよいのではないか。―人材紹介会社としての思いを語ってもらった。
C:最近、若い日本人がベトナムに多く来るようになった一方で、海外に出たがらない人も多いと聞きます。
A:私の周りにもそういった友人がいます。
B:このままだと、日本で頑張って日本を支える人たちは意図に反して、世界から見て「それなりの賃金で、すごくよく働くワーカー」に結果としてなってしまうのでは?という気がします。今の50~60代の人が日本でも、もちろん世界でも必要とされているのは、語学ではなく、圧倒的な技術と経験を持っているからですよね。日本をゼロから作ってきた先輩達なので。でも、現在の成熟した日本社会で、今の働き方を続けていても、新しい付加価値を生むことは難しいのかなと思います。
C:成熟してきて、効率化を追求してきた社会の結果ですよね。
B:海外に出ることはよいことです。でも、悩んで海外に出てきたなら、その先で事業を立ち上げるなり、成熟した社会ではできなかった自分自身の価値を環境ごと作っていってほしいなと思います。
A:海外に出て就職した後の育成に関しては、人材紹介会社はノータッチなんですよね。本来、就職というのは採用後がスタートなのに。人材を採用した後も育成に力を入れているのは、大手のメーカーや商社くらいです。
B:人材業界の中で、いただいたサービス料を就職後の育成費にも使えるような仕組みがあるとよいんですけれどね。このままだといつまでたっても構造が変わらない気がします。
C:そうですね。各企業にも少しずつプッシュしながら、ここベトナムで、そういった人材業界の新しい流れをどんどん作っていきましょう!
[2016年8月20日 VIETJO覆面座談会 A]
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