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こんにちは、G.A.コンサルタンツの関です。前回の続編として今回は、リテンション(従業員の定着率向上)についてもう少しお話をしたいと思います。
具体的事例についてお話をする前に、まず1つの考え方をご紹介します。色々なリテンションについての方法論がありますが、この考えに立ち返ると整理がしやすくなります。
「Total Rewards」と呼ばれるこのコンセプトは、そもそもが金銭報酬だけでなく、非金銭報酬も含んだトータルな報酬によって従業員のモチベーションは決まるという考えに基づいています。
行き過ぎた成果主義に対してのアンチテーゼとして提唱され、人はお金だけによって動機付けされるわけではなく、もっと他者からの承認や仕事そのもののやりがいといった目に見える報酬以外のところにも目を配るべきだと、その必要性を説いています。
非金銭報酬のABCDE
Total Rewardsの非金銭報酬の部分についての考え方は、頭文字を取って非金銭報酬のABCDEと呼ばれています。
以下順を追って紹介していきますと、
「Acknowledgement (感謝と認知)」
→ 成績優秀者、高い貢献をした社員への感謝状などのフィードバック
「Balance of work and life (仕事とプライベートの両立)」
→ 生活の質を高めるためのカウンセリング、育児との両立のサポート
「Culture (自由闊達な組織風土)」
→ 提案がしやすい風土や、従業員間での良好なコミュニケーション奨励など
「Development (成長の機会)」
→ 学習の機会、職務の習熟度を高める機会の提供、キャリア開発
「Environment (就業環境)」
→ 場所、時間、オフィス環境、仕事の内容
人材を獲得する段階では金銭報酬に焦点がいきやすいのですが、採用した人材を定着させる上でこの非金銭報酬の考え方は役立ちます。
むしろ金銭報酬だけで人材をキープすることは難しくなっています。特にベトナムにおいては家族主義の影響が強いことから、随所に「家族」がテーマとして登場して参ります。
このTotal Rewardsに関連させて、ではどういった施策が効果的なのか、いくつか挙げていきたいと思います。
ベトナム人従業員の定着率向上施策
【社員旅行】
日本人と異なり、組織に対するロイヤリティはベトナム人の中ではあまり強く意識されません。それよりも、一緒に働く仲間への帰属意識が大きく影響してきます。中でも変わっているのが、社員旅行に従業員の家族を招待する会社が多いことです。何故なのでしょう?
筆者の経験で、従業員にこう言われたことがあります。「普段夫婦同士どういった会社で働いているのか全く見えません。会社や仕事への理解を示してくれない、時には離職を促してくるケースすらあります。でも社員旅行を通じて、社員旅行に呼ばれた配偶者が『こういう会社で働いているのか、いい会社だね』と言ってくれるようになるのです」。
【MVP制度】
ファストフードのお店で、壁に「Staff of the Month」と1人の氏名が貼り出されているのを見たことはありませんか?また、IT企業でも月間MVPが表彰されているのをよく見かけます。
特に外部との交渉や営業で売上を上げるといったような業務でなく、業務の評価が定性面に寄っている職種については、意識的に会社側から肯定的なメッセージを伝えることによって良い行動へのドライブがかかりやすくなります。
【時短・在宅ワーク制度の活用】
産休後の時短については労働法でも規定されていますが、核家族化が進行しつつあるベトナムでは1年間の時短のみでは十分と言えません。2児、3児(最近は3児はベトナムで少なくなりつつありますが)の母親となりますと、率直な感想では2時間、3時間の時短が必要なのではないでしょうか?
既に皆様がご存知の通り、多くの会社では女性スタッフが戦力の中心です。硬直的な人事制度で運用するか、それとも柔軟に働きやすい環境を作り、優秀な女性スタッフを上手く活用するかがポイントになってきます。一部の会社や職種では柔軟な働き方が認められ始めています。
【褒める】
最後に、当たり前のようでいてなかなか実践が難しいのが、この単純に「褒める」という行為です。誰しも大半は良かれと思って業務に取り組んでいます。ただ、時にその方向性や考え方が間違っている時があります。
日本人は減点主義に慣れ親しんでいるので、間違った場合に指摘をして、それを修正・改善することで次に繋げていきます。ベトナムではどうでしょう?逆にモチベーションを下げてしまうことの方が多いでしょう。
単純に「いいね!」と伝えるだけで十分な効果は見込めます。迅速に対応してくれたスタッフに対して「よく短時間でやってくれたね、有難う!」と、ミスなく業務を完了させた人には「グッドジョブ!次もこの調子で」と声を掛けるなど、本当に発する言葉は単純で問題ないと思います。要は面倒くさがらずに言うか言わないかだけです。
とかく「ベトナム人は給与次第でホイホイ転職する」と揶揄されることが多いのですが、意外とこの非金銭報酬の部分を大事にしているベトナム人の方が多いように見受けられます。ウェットな国民性の持ち主だと思います。今回述べた例は一部にしか過ぎませんが、皆様の参考となりましたら幸いです。
[2015年5月7日 ベトジョーコラム A]
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