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[コラム]

ベトナムの人材事情(1):ベトナム人の就職・転職観の変化

2015/06/13 06:00 JST更新

 初めまして、G.A.コンサルタンツベトナムの関と申します。私どもは2006年よりベクラムバンク(VieclamBank)という人材紹介ブランドのもとでウェブサイトを運営し、ベトナム人登録者向けに主に日系企業での採用支援をしております。  本コラムでは、稚拙な経験ではございますが、人材ビジネスを通じて見聞きした私なりのベトナム人観につきまして、出来る限り皆様の日々の仕事にお役に立つ情報をお届けしていきたいと思っています。これからどうぞ宜しくお願い致します。 ベトナム人の就職・転職観の変化  今回第1回ということで、インパクトのあるテーマの方にすべきかなどあれこれ考えましたが、ベトナム人の就職・転職観の変化についてまずお話させて頂くことにしました。  今から10年近く前、私どもがまだビジネスの立ち上げ段階にいた頃ですね、当時は本当に日系で人材紹介を手掛けるところも少なく、多くの外資系企業ではトゥオイチェー(Tuoi Tre)新聞、ベトナムニュース(Vietnam News)などの日刊新聞の求人広告が使われていました。それに次ぐ形であったのが求人ウェブという程度でした。  私どもも同様に求人広告を利用し、多くの候補者と面接を重ね、そして、晴れて数名の若手を採用することが出来ました。勿論初めての採用ですから気合も入ります。教育にも時間を掛け、私なりに丁寧に相談に乗ったり、フィードバックもしていたつもりです。  ところがです。1か月も経たない内に彼等から辞職願いが次々とメールでやってきました。理由を聞くと、「会社の将来性に期待が持てないから」「人事制度などが整っていないから」など。整備されていないところがあれば一緒に作っていくつもりでしたから、これを聞いた時は肩の力が抜けていくような思いになったものです。  その後の話は想像にお任せして割愛致しますが、この時自らの至らなさを反省すると共に感じたことが日越間の「就業観の違い」でした。

20代と30代で大きく変わる転職観  その時私たちが採用したのは20代前半、中には新卒で大学を出たてのホヤホヤのスタッフもいました。後で気付いたことでもあったのですが、20代は転職へ強いインセンティブを持ちながら仕事をしています。自社で採用する時は見え辛かった部分です。  言い換えると20代のうちは転職をすることで「給与」「経験」「ポジション」といったステータスを次々に高めようとしています。逆に言うと、各ステータスを高めるのに繋がらない仕事や職業に関しては、あっさりと諦め、次に移った方がいいと考えます。  一方30代、特に結婚もしたスタッフとなると、転職をする時の心理にも変化が訪れてきます。ある程度給与の上昇カーブを理解した候補者は、「これくらいが相場的にも妥当ではないか」と言えるラインに来ると積極的な転職をしようと考えなくなります。  むしろチャンスがあればすぐ飛びつく20代に対し、30代は我々が想像する以上に慎重に決断します。このあたりは弊社への登録者の動きでも顕著に現れています。20代は自分を積極的に売っていき、とにかく多くの募集案件に応募(乱打?)をして、ある種自分を安売りしているとも見えます。  一方で、30代は募集案件への自己応募を手控え、スカウトが来るのを待つ受身の姿勢へと変わります。特に女性に関しては家族を優先し、仕事や職場に多少不満があったとしても安易な転職はしません。最近ベトナムでも「35歳女性転職限界説」というのがまことしやかに流れ始めているくらいです。

IT系での新しいキャリアの形  IT系エンジニアも上述の通り、キャリアの上昇カーブが緩やかになり始めるまでに適職探しをします。開発でもアウトソーシング系に行くのか、自社プロダクト・サービス系に行くのか、専門職系、マネジメント職系に行くのか、などなど。ある程度見えてくるまでは、躊躇なく転職を繰り返し「ベトナム流」キャリアアップをしていきます。  そこまでは他の業種と似ているのですが、ここ最近ITエンジニアの間でユニークな動きが出始めました。日本でもランサーズ、クラウドワークスといったサイトを通じて個人で開発を受託するように、「Freelancer.com」というサイトでウェブの制作を副業で手掛ける事例が増え始めています。  例え今の仕事で理想の給与が手に入らなかったとしても、職場環境は良いし、仕事にもそこそこ満足しているし、といった30代エンジニアの副業手段として注目されているのです。但し、日中は本業があるため(本業そっちのけで副業をする輩もいますが・・・)、業務時間外や週末を利用しての副業となり、なかなかリラックスする暇がないのが難点です。 ベトナムで「日本流」の組織作りは機能しない  日本とベトナム、その取り巻く環境や歴史的に辿ってきた道のりには大きな違いがあり、それが一部就業観に反映されていますが、最後に紹介した事例のように新しい産業については日本とベトナムとさほど違いが見えません。  むしろ「Linkedin」の活用などは、ベトナムの方が日本よりも進んでいるくらいです。とはいえ、結局のところ求職者が仕事に対して何を望むかが全てでもあります。年齢、家庭状況、労働市場からその人がどんな就業観を持っているのか面接を重ねる度毎に想像できるようになります。  ほぼ全員が辞めない前提で組織を作る日本流はご存知の通りベトナムではうまく機能しません。長期・短期雇用の人材を織り交ぜながら、入れ替わりがある前提で、辞職されても動じない、ベトナムならではの組織作りをして頂ければと思います。 

[2015年6月13日 ベトジョーコラム A]
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