[コラム]
【第3回】その下痢、アメーバではありませんか?
2015/07/28 10:07 JST更新
ベトナム赴任中あるいは旅行中に、もっともよく罹る病気は下痢ではないでしょうか。下痢にもいろいろな原因がありますが、
きちんと検査すれば見つかるもの
きちんと治療すれば早く良くなるもの
の筆頭がアメーバではないかと思います。
アメーバ(アメーバ症)
私は、日本国内でアメーバを見たことが一度もありませんでしたが、こちらに赴任した初日にアメーバによる下痢のケースに遭遇しました。そのくらい、ベトナムでは頻繁に出会います。
出典:
CDCアメリカ疾病予防管理センター
こちらが顕微鏡で見たアメーバですが、アメーバの卵(正確には嚢子[のうし]と呼びます)が口から入ると下痢になります。どうやって口から入るのか、なぜベトナムで多いのか。ひとえに衛生環境ではないかと思います。下の写真は、近所の食べ物屋さんで、お皿を洗っている様子です。
感染のルートは、糞口感染と呼ばれます。アメーバに感染した方の便の中にあるアメーバの卵が、水、食べ物、お皿やコップなどを経由して、口から入って発症するという意味です。アメーバ症を説明するウェブサイトには、アメーバの卵が体内に入って2週間ほどしてから発症するように書かれていることが多いですが、ベトナム到着後数日で、発症された方を見ることも少なくありません。
診断と治療
感染による下痢の原因には、「ウィルス」と「細菌」と「寄生虫」があります。日本で冬場に流行るノロウィルスはウィルスによるもの、日本の夏場の典型的な食中毒は細菌によるものです。寄生虫は日本ではほぼ見ることがないですが、ベトナムではアメーバを含め、未だによく見かける病気です。
症状としては、嘔吐、下痢、腹痛などがありますが、これらは他の病気でも良く見られます。したがって、症状のみからアメーバ症であると言い切ることはできません。検査としては、主に、便を用いた検査と、血液を用いた検査がありますが、もっとも手早いのは、便を顕微鏡で見て、上の写真のようなアメーバを見つけることです。
アメーバは細菌ではないので、通常の下痢の際に服用する抗生剤とは薬が違います。医師がアメーバを疑い、アメーバを見つけるための検査をし、アメーバの薬を処方する必要があります。当クリニックでは、即日便検査の結果説明後、すぐに治療を開始することが可能です。
このような場合に受診をお勧めいたします
通常の下痢は、数日から数週間で収まるものですが、それ以上長く続く下痢の場合には、アメーバなどの寄生虫による下痢の可能性があります。またアメーバによる下痢は、重症化すると「アメーバ赤痢」として、腸管から出血して生命にかかわることもあります。一概に何日以上とお伝えすることは難しいですが、2週間以上続く下痢の際には、医師にご相談下さい。
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<著者紹介>
Family Medical Practice Vietnam
奥田雅人 医師(ホーチミンクリニック)
内科、消化器科専門
岡山大学医学部卒業 内科認定医
日本消化器病学会 専門医
日本消化器内視鏡学会 専門医
国際旅行医学会 認定医療職
2015年6月 着任までは住友別子病院に勤務し、年間1000件の胃カメラ検査、300件の大腸カメラ検査を担当していた。医師になる前は、石油採掘現場のエンジニアとしてエジプト、インドなどに駐在していた経験を持つ。
自身が海外駐在の経験者として、赴任者やその家族の気持ちがわかる医師となることを目指している。 |
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