ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

【第21回】~子どもおもしろ白書~劇ごっこから見える舞台作り

2023/10/12 17:45 JST配信

まずは、かっこう組の映画館の話から

 年中のかっこう組のある日のこと、「えいがかんにいった」という話から、映画館で映画を観る時に何を食べるかという話に広がりました。保育者も「映画館に一緒に行きたいねえ」「映画館で食べるものにはポップコーンがある」「よし、わかった!」「今度ポップコーンを食べながら、映画を見よう」とその場で話は纏まりました。その後「えいがかんはいつやるの?」とか「ポップコーンはあるの?」と本当の映画館をこちらが考えねばならなくなりました。

 どのタイミングで映画館をやれるか保育者は考えます。私たちの幼稚園は毎月の誕生会で、保育者たちが考えたお楽しみ会を子どもたちに披露します。時に大縄跳びだったり、合奏だったり、素話だったり、子どもたちがみて、遊びに取り入れていくだろうということを予想してのお楽しみ会の内容となります。これを利用して映画館を実行しようと計画に入れました。

以前のエピソード

 今回の子どもたちの映画館ごっこを考えながら、日本の幼稚園での子ども達のエピソードを思い出しました。

??チアガールショー

 年長児のチアダンスが好きな女子が、日頃から踊り通したチアダンスを、満を持して、みんなの前で発表する時間を持ちました。場所をホールに変えて見せるためのリハーサルが始まります。するとチアダンスに入らない、A男とB子が何を思ったかビデオカメラを抱え撮影クルーになって撮影体制に入りました。カメラを持って動く様が本当のカメラマンの様です。本番でも撮影隊をやってもらうことにしました。当日、チアガールのダンスに合わせ、動くA男とB子のクルー。最後のフィナーレでB子はポケットに入れてあった紙吹雪をダンサーに向けて振り撒く演出をしたのでした。観客たちは、チアの踊り以上に、紙吹雪の演出に感激でした。

??劇ごっこ 年長児「パックンおおかみとくいしんぼん」

 3学期になり、4~5人のグループで自分たちの気に入った絵本を選び、劇ごっこをするという課題を出しました。舞台の場所から相談して決めていきます。M男のいるグループは裏庭のブランコを利用して舞台にしました。役を決めることになり、M男はどの役も拒否します。保育者はなんとか役に就かせようと、役柄の説明をしますが本人はガンとしてやらないと主張していました。仕方なく、M男は抜きで劇をスタートすることにしました。ところがです。ストーリーの途中で、トンネルが出る場面になった時、トンネルに利用する飛び箱を、M男がセッティングしようとしたのです。保育者はびっくりしたのと同時に、役にさせようと必死に説得しようとしていた保育者独自の思いが恥ずかしくなりました。舞台の構成は役者だけで出来上がっていません。大道具もいれば照明も、音楽担当もいります。子ども達の劇ごっこを役者のみの視点で捉えていた保育者特有の価値観に気付かされました。

再びかっこう組の映画館ごっこの話へ

 自分たちが見た影絵の再現が始まりますが、最初から演ずる側に入らず、観客に徹する人がいました。自分たちで作ったポップコーンを食べながらの鑑賞タイムとなっています。K男は、「あついから、せんぷうきをまわす」「カーテンをしめる」「でんきのスイッチ」と設備係に没頭します。防犯の係も兼ねていて、不審者侵入の探索器も壁に貼っていました。

 翌日になると担任の思いも重なり、映画館の横にはピザ屋が登場し、観客の一部だった人が売り屋さんになりました。

さらに担任の思いは重なり、「本物のポップコーンを食べながらみよう」となり、翌日はキッチンの協力も得てポップコーンづくりをやった後、実際に食べながら、映画(影絵)を見ました。

 以前のエピソードからも気づかされていたのですが、劇ごっこの構成は、配役だけではないということを子どもたちの遊びから私たち保育者が学びました。子ども達の見ている視野は遥かに広かったということです。我々大人が思っている以上に、子どもたちは「社会」の中に生きていました。幼稚園の中だけに通用する世界ではなく、子どもたちが生きている日常の社会が、子どもたちの再現力で学びにつながっていると改めて気づかされました。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

>> おおぞら日本人幼稚園ウェブサイト

>> タオディエン日本人幼稚園フェイスブックページ
子育て奮闘中のパパママにエール!
その他の記事はこちら>
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
米クアルコム、ベトナムに大規模AI研究拠点設立へ 世界3か所目 (18日)

 米国の半導体大手クアルコム(Qualcomm)は16日、ハノイ市で行われたグエン・チー・ズン副首相との会談で、ベトナムに人工知能(AI)分野の大規模な研究開発(R&D)センターを設立する計画を明らかにした。  同セ...

世銀とアジア開銀、インフラ・環境改善に500億円超の融資 (18日)

 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国家会議センターで16日夜、ベトナムにおける3件のプロジェクトを対象とした世界銀行(WB)とアジア開発銀行(ADB)による総額約9兆2399億VND(507億円)の融資・支援契約が締結された。...

モバイルマネー、試行期間を25年末まで延長 (18日)

 政府は15日、少額取引決済向けのモバイルマネーの試行期間を延長する決議第87号/NQ-CPを公布した。  ベトナム国家銀行(中央銀行)から承認された企業は引き続き、2025年1月1日から2025年12月31日まで、モバ...

ベトナム戦争の孤児ら乗せた米軍機「ベビーリフト」墜落から50年 (13日)

 2025年4月4日、ベトナム戦争末期の米軍による「オペレーション・ベビーリフト」の航空機墜落から50年を迎え、墜落現場となったホーチミン市12区ブオンライ(Vuon Lai)通りで追悼式が行われた。  「オペレー...

ライオン、医薬品・医療機器の地場メラップを100%子会社化 (18日)

 ライオン株式会社(東京都台東区)は、ベトナムの持分法適用関連会社で、医薬品・医療機器の製造販売を中心とした企業グループの経営戦略・経営管理事業を展開するメラップライオン・ホールディング(Merap Lion H...

フェニカー大学を格上げ、「構成大学と学部を傘下に置く大学」に (18日)

 レ・タイン・ロン副首相はこのほど、フェニカー大学(Phenikaa University、ハノイ市)を、「構成大学と学部を傘下に置く大学」に格上げする決定に署名した。  今回の格上げにより、フェニカー大学は学部を再...

タンソンニャット国際空港、第3旅客ターミナル開業 (18日)

 ベトナム空港社[ACV](Airports Corporation Of Vietnam)は4月19日、4月30日の南部解放・南北統一50周年の記念日に合わせて、ホーチミン市タンソンニャット国際空港の第3旅客ターミ

首相、30年までの国家電力開発計画の調整を承認 第8期電力計画 (18日)

 ブイ・タイン・ソン副首相は15日、「2021~2030年国家電力開発計画及び2050年までのビジョン(第8期電力計画=PDP8)」の調整を承認する首相決定第768号/QD-TTgに代行署名した。  同計画は、経済社会発展に必...

1~3月期の訪日ベトナム人18.8万人、3月までの累計で過去最高記録 (18日)

 日本政府観光局(JNTO)が発表した統計によると、2025年3月の訪日ベトナム人の数は前年同月比▲5.0%減の6万4100人だった。  1~3月期では、前年同期比+9.3%増の18万8200人となり、3月までの累計で過去最高を...

1~3月期の航空旅客数2070万人、コロナ前超え (18日)

 ベトナム航空局(CAAV)によると、2025年1~3月期の航空各社の旅客輸送量は前年同期比+9.2%増の約2070万人となった。内訳は、国内線が同+5.4%増の約900万人、国際線が同+12.3%増の約1170万人で、いずれも前年...

6.6万人が参加した売春斡旋ルート、元締めの27歳男に禁固15年 (18日)

 ホーチミン市人民裁判所は14日、メンバー6万6000人近くの売春斡旋ルートを組織した元締めのグエン・フウ・タイ被告(男・27歳)に売春斡旋罪で12年、わいせつ物頒布罪で3年の計15年の禁固刑を言い渡した。  ...

3月の対日貿易収支、1462億円の黒字 前年同月比2.35倍 (18日)

 日本の財務省が発表した2025年3月の貿易統計(速報)によると、ベトナムの対日貿易収支は前年同月比2.35倍の1461億6900万円の黒字だった。  日本からベトナムへの輸入額は前年同月比+0.8%増の2482億0200万円...

日鉄物産、ビグラセラと工業団地販売代理店契約を締結 (18日)

 鉄鋼、産機・インフラ、食糧、繊維その他の商品の販売および輸出入業を手掛ける日鉄物産株式会社(東京都中央区)は、建設資材メーカーで工業団地開発大手のビグラセラ[VGC](Viglacer

ユーロチャム白書発行、EVFTA発効から5年の成果と課題 (17日)

 在ベトナムヨーロッパ商工会議所(ユーロチャム=EuroCham)はこのほど、「ユーロチャム白書」の2025年版を発表した。白書の発表は今回で16回目となる。  ユーロチャムはこの中で、ベトナムが引き続きグロー...

トウガラシやパッションフルーツなど、公式ルートで中国輸出 (17日)

 農業環境省は15日、ベトナムを公式訪問していた中国の習近平(シー・ジンピン)総書記 兼 国家主席の立ち会いのもと、中国海関総署(GACC)との間で、ベトナムのトウガラシ、パッションフルーツ、ツバメの巣、米ぬ...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved