児童婚の割合が高い理由として、子供たちが早くから家族のもとを離れて学校に通うということが挙げられる。中学1年生(日本の小学6年生に相当)から全寮制の学校に通い、両親の目が行き届かないのだ。こうした中で、インターネットなどを通じて様々な情報が入るようになり、思春期を迎えるとそういった情報の影響を受けて、異性への興味が芽生える。
(C) dantri |
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もう1つは、地域の人々、特にモン族の人々の考え方に、古くからの慣習が深く根付いているということがある。彼らは、子孫を残すために、多くの子供に囲まれて幸せになるために、労働力を得るために、早く結婚すべきという固定観念がある。
児童婚の年齢は主に13歳、14歳が多いという。夏休みやテトに遊びに出かけ、そこで相手と出会って恋に落ちるパターンが多いためだ。また、家族に反対されて、有毒な葉っぱを食べたり、殺虫剤や除草剤を飲んだりして自殺未遂を起こすケースも毎年後を絶たない。自殺未遂に終わらず、実際に命を落とした少年少女もいる。
多くの両親は子供が死んでしまうことを恐れ、子供の望みをしぶしぶ受け入れざるを得ず、好きにさせるしかないというのが現状だ。
2023年にムオンラット郡では412組が結婚手続きを行い、このうち12%にあたる50組が児童婚だった。50組のうち、21組は夫と妻の年齢差がなくどちらも若い。しかしながら、ムオンラット郡における実際の児童婚の割合は統計のデータよりもずっと高い。なぜなら、児童婚のケースのほとんどが、結婚式を行わず、結婚手続きも行わないからだ。
以前は当局が児童婚を阻止する宣伝や運動を行っていたが、近年は児童婚をさせた家庭に行政処分を科しているため、児童婚の割合は減少しつつある。
しかしながら、依然として多くの家庭では世代をこえて児童婚が連鎖している。2人、3人と子供がいても結婚手続きを行わないカップルもいる。そして、そのまま30代になり、子供も若くして結婚し、孫ができるのだ。
児童婚、貧困、文盲はもはや、タインホア省のへき地に暮らすモン族の人々の生活の大部分をひっ迫させる、「悪循環」のようなものとなっている。