カリフォルニアの人気ベトナム料理店「スレンテッド・ドア」で食事をするには最低4週間前までに予約が必要だ。予算は2人で100米ドル程度。ここでは毎日1000食程度を提供しているという。4000を越えるライバル店との競争を勝ち抜いたこの店の店長を務めるのは、ダラット出身のチャールズ・ファン(越名:ファン・タイン・トアン)である。
14歳のころ家族とカリフォルニアに移住。少年の頃から毎朝弟妹たちの朝ごはんを作ってから学校へ行き、学校から帰ると遅くまで父の店を手伝う生活だった。父はそんな息子をかわいそうに思い、人生を変えるために建築の道に進ませようとした。中学卒業後、父の言葉に従ってバークレー大学の建築科へ。3年次のとき中退してニューヨークの建築事務所に入ったが、途中で嫌になりセールスに転職。しかしその会社が倒産したため、仕方なくカリフォルニアへ戻り何をしようかと考えていたところ、古い壊れかけた厨房セットが売られているのを目にする。当時周辺にベトナム料理の店はなかった。彼の頭に「ベトナム料理店を開く」というアイデアがひらめいた。
家族全員で14万ドルの開業資金を集め、1995年に店をオープン。味もおいしく、当時ベトナム料理は珍しかったので、すぐに80人の店員でも追いつかないほどの大人気となった。店が手狭になってきたため2002年にブランナン通りへ移転。この店はバーカウンターも備え、わずか1週間のうちに売り上げは2倍になった。1年後さらなる店舗拡大のためフェリービルに移転し、フロアの面積は約2500?となった。
彼はいつも店員たちにこう言っている。「レストランのサービスはブロードウェイで演じるのと同じだ。有名だろうと、昨日のサービスがどんなに良かろうとお客様にとってはどうでもいいことだ。ただ今日、出したお金に見合うだけのサービスを受けられるかどうかが重要なのだ。」彼はサービスにおいて「最も心に残る演出」を忘れない。彼の店にはビル・クリントンも訪れ、また彼はアメリカで有名なテレビの料理番組にも出演した。
最近テイクアウトも始めた。アウト・ザ・ドアというその店ではフォーやおかゆ、ベトナム式フランスパンサンドイッチなどを売っている。彼の夢はいつの日かマクドナルド好きの地元人にもベトナム料理が受け入れられるようになることだ。栄養価が高く太りにくいベトナム料理がアメリカ人の日常の食卓に上り、謝恩祭のご馳走ではフライドチキンの隣にビタミンたっぷりの生春巻きがおかれるようになることを・・・。